アンジェラ ~新作DVD~
2006年 10月 22日

ところで、この作品はかの「ジャンヌ・ダルク」以来、ベッソンの「監督作」である。この間6年間、ベッソンは、只管、プロデュース業に専念し、フランスの若手監督の発掘と育成に力を注いでいたそうだ。そうそう「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」なんかも、制作総指揮に当っていたと記憶している。この監督は筆者と殆ど同年代だから、結構彼の考えが理解できると思いきや、実は、前述の「ジャンヌ」しか、彼の監督意図を理解できる作品というのは筆者には無い。だから、6年間もメガホンを取っていなかったと言っても、実はそんなに気にならなかったのも事実。ただ、ミラ・ジョボの後遺症でも残っていたとしたら不幸な話だなぁとは心配をしていた。
さて、その6年ぶりの待望の作品「アンジェラ」であるが、至ってシンプルな内容であり、いや、シンプルっていうのはどちらかというと褒め言葉で、実を言うと、何を言いたかったのかが、今までの氏の作品とは全く違う意味でわからない。まず、物語であるが、大抵の映画作品は次の、その又次の展開を期待するものであるが、この作品に至ってはそんなことが何もなかった。というか、この流れからいったらはっきり言って落ち着くところはふたつしかなく、それはどちらも全然面白くないのである。多分、殆どの鑑賞者がこの作品をご覧になってそう思ったに違いない。だってタイトルからして「アンジェラ」なんだから、もう殆どのところで途中の展開云々でなく、ラストはみえてしまう。
次にモノクロームで撮ってくれたことには大変賞賛をしたいが、これもその撮影の対象でモノクロの是非が分かれてしまった。風景という点では、パリの街並みを見事に表現した。特にセーヌ河のあたりは絶賛であり、アンジェラがどうしても乗りたいという意味が大変良く理解できた。又、同時に何かを誇張する訳でもなく、鑑賞者の誰にでも分りやすいパリの描写に努めた。そう、この点は前述した「シンプル」という範疇に入る。しかし、いつも筆者が力説する「女優」を綺麗に撮れたかという点では、全くもって論外だった。モノクロームは、一般的にカラーより「女優」を綺麗に撮れる。というか、今までのフランス映画史ではそうであった。又、最近ではカラーにおいても、特にフランス映画では女優を綺麗に撮っている。思うに、これはアンジェラ役のリー・ラムスッセンが、表情の美という前に全身的美しさの先入観を鑑賞者に与えてしまったからかもとれない。但し、それを覆すべく、アンジェラが涙するシーンがあるが、ここで、彼女の「表情美」を描写し切れなかった。ウーン、残念なのである。
極めつけはラストも、「ふたつの内のさらに良くない方」を選択してしまい、もっと酷いのはそのラス前である。あのシーン、ひとつ間違うと笑ってしまうよ。しかし、笑わずにすんだのは、ジャメルの演技力。彼の存在に終始救われた作品だった。中盤、彼の鏡に映った自分の顔を見て涙するシーンがあるが、ヒロインの涙シーンより、こっちの方が感動してしまうってどういう映画なんだろうって思ってしまった。
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by turtoone
| 2006-10-22 15:53
| 映画(あ行)