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暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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ノーカントリー

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今年度のオスカー作品賞。但し、2年連続、オスカーは何を基準に作品賞を選んだのかという疑問だけが残った作品鑑賞であった。

9.11以降、アメリカは何を基準に何処へ行こうとしているのかが本当に不明瞭に成ってきている。昨今の大統領候補選びもそうだ。民主党といい共和党といい、勿論候補者を選ぶ合衆国民が、国家になにを求めているのか、また、それ以前に自分たちが何を要求したいのかが分からない。しかし、これは何もアメリカだけではなく、昨今のわが国も同じかもしれない。だが重大事としては、本来そういう国家の姿勢に苦言を呈することの出来る人物や組織、団体がなくなってきているということも事実。特にマスコミの体たらくは全世界に共通することだ。映画というのは広い意味でいえば、芸術という部分にも、報道ではないが主張するという部分とメディアということではではマスコミという分類にも入る。少なくとも、その映画の世界での最高峰にある表彰が、なぜ、こういう作品ばかりを選出するのかが全く理解できない。

とはいうものの、作品を否定しているわけではない。こういう作品があっても良い。少なくともその作品の奥底に潜む主張は理解できるからである。前述したが、今アメリカが何処に行こうとしているかの問題点を見事に現した作品だし、それは暗に今に始まったことではなく、1980年に始まったことであると言っている。この時代設定は無視しても構わないと思うが、この年代を重視したほうがこの作品化はより理解できる。特にモスの行動である。200万ドルという大金を冷静に処理するかと思えば、思ってもみない行動に出る。しかし、それはベトナムを戦った男のその後の時代では全く無意味になってしまった誇りである。そして二人の追う男がいる。一人はユーモアを持たない男である。アメリカ人に本当の意味でのユーモアがなくなったのは何時からだろうか。そう、丁度この時代に関わってくる。世界の頂点に立っていたアメリカ。世界で最も強かったアメリカは、1979年にロシアにアフガニスタンに侵攻されその面目を失うこととなる。中東にも多くの火種を抱え、もはや、第2次世界大戦終戦の頃からの勢いは全くみられなくなった。ユーモアをなくした国、それが今のアメリカであり、その起源は丁度このころである。さらにもう一人の追う男こそ、昔ながらのアメリカである。恐らく、南北戦争以降ずっとこの場所を統治してきた一族の末裔である。自由の国アメリカで一番似合わないもの、実力の国アメリカに一番必要でないもの、それは世襲である。そして、それがもうこの時代には通用はなくなっている、こんなアメリカのど田舎でも通用しなくなっていることを主張している。この特異な3人の人物をうまくバランスさせることで、作品を見事に構築した。

もうひとつ、今回はネタバレスレスレで言わせていただくが、この3人の物語からの「消し方」に興味がある。そう、この3つとも「消却」してしまわなければ、これからのアメリカは無いという風刺が込められている。モス、シガー、ベル保安官の順番で前述解説したそれぞれの役割は、この物語にあるように「消えて」いかなくてはならないというのが、この物語を通して主張されたアメリカの将来への提言である。武器や戦争はいらない、ユーモアを取り戻せ、そして権威は自ら捨て去れというのが、コーエン兄弟が提唱するアメリカの道標であろう。この辺りの流れは一方で呆気なく思われるシーンもあるが、どうして作品全体を通して考えると可也深い。

但し、冒頭に述べたようにこういう作品をオスカーに選出した意味は全く分からない。作品として出来が悪いといっているのではない。沢山ある作品の中ではこういうものもあっても良いし、奥底にあるものを考えると高く評価をすることも出来る。しかし、これが年度を代表する作品だということには可也問題があると苦言を呈しておきたい。本当にここ数年、いや、極端にいえば、筆者は2001年「ビューティフルマインド」を最後にすべての作品がその年を代表するとは思えなく、納得していない。もうひとつ、ハビエル・バルデムの助演男優賞も非難する。予告編を観て「海を飛ぶ夢」以上の演技を期待したが、全くもって外された。勿論彼の演技は好きだし、今回の太りっぷりといい、髪型といい役作りは工夫が見られるが、これでは、ジョージ・クルーにーとシャー子さま、レネーと同じ「太ったデ賞」でしたないではないか。はっきり申し上げ、ケイシー・アフレックの方が上であった。そう、ケイシーで思い出したが、これだけの人と人とが関わる作品なのに、「ジェシージェームスの暗殺」のような心理戦が殆どなかったのも残念。その辺りが加わるともっと評価も上がったのだと思う。

筆者的にはラストの2シーンにやたら注目。子供のシーンと保安官の夢。シガーが去った直後の子供の会話には注目して欲しい。そして、保安官の台詞が案じるアメリカの未来にも。但し、ここも、最後で問題提起に長々係ったことを一気に纏めに入った、というか慌てて纏めたという印象だけが残ってしまった作品になった。要するに、この作品はモーツァルトの「レクイエム」やシューベルトの第8番交響曲を高く評価しているようなものである。ちょっと例えがまずいかな??


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by turtoone | 2008-04-06 22:45 | 映画(な行)