ライラの冒険 黄金の羅針盤
2008年 03月 20日
また新しいファンタジー作品の登場である。
「テラビシアにかける橋」でも書いたが、ファンタジー作品というのは製作者は創造という作業から世界観を導くが、鑑賞者には想像力を与えるどころか、寧ろ低下させるのではないか。実際にパラレル・ワールドという考え方は随分昔から存在している。大体から神話といわれている時代の書物にある「神々」と呼ばれる存在も、地球人からすればパラレル・ワールドの存在だ。例えばギリシャの文学にはそういう物も多いし、旧約聖書だって、そういう観点からみれば立派なパラレル・ワールドである。筆者はパラレル・ワールドを否定している訳ではない。ただ、どうしてこんなに次から次へとファンタジー作品が必要なのかという現実に疑問を持ってしまう。所詮、物語にはフィクションとノンフィクションしかないし、作品の殆どはフィクションである。歴史だったフィクションの部分が相当多い。だが、歴史のフィクションは国家とか体制とかを維持するための知恵であると考えれば、極端に言えば、ナポレオンが日本に攻めてきたという全くありえない事実まで脚色しなければ、然程の修正は致し方ないと思う。いつもいうようにどうせ歴史とは「勝者の理論」であるのだから。しかし、創造力というのは自らが作り出すものだから、現代のように家庭のテレビも50型くらいになって、10畳程度のリビングに置いてあれば映画館のスクリーンを一番後ろの席で見るのと変わらないくらいの視聴覚を日々支配されてしまう中で、一体何人、何パーセントの人間に物事を空想し創造する力が養えるだろうか。ファンタジーも良いが、現実に世界の至るところで起こっていることの本質は何なのか。現実逃避をしないための有益な映像の製作をお願いしたいと思う。
この作品も、娘たちの鑑賞の要望と、筆者的には二コールが出ていたから観にいったようなものである。この作品でポイントになっているのはダイモンという存在である。しかし、残念ながらそのダイモンという考え方を作品の中で受け入れるのには、予備知識がかなりあったにも係わらず相当な時間がかかったのも事実。この点が随分、この作品の方針を理解するのに勿体無い時間であった。比較的われわれ日本人はこのダイモンという考え方は捉えやすいと思う。例えば霊魂という考え方にあまり抵抗がない。守護霊なんていう考え方も日本人は結構平気で受け入れられる。しかし、問題は守護霊が先祖であるのなら受け入れやすいが、それが動物霊だったらどうなんだと思う点だ。キツネツキなんていうのは一般的には歓迎されないし、わたしはキツネがついているのよなんて人に言ったら、何なのだろうと勘違いされて敬遠されるだろう。もうひとつは映像的にダイモンを表現することに可也の苦労をしたと思われる反面、結構他の部分が雑に描かれていたことは残念だ。ダイモンの大きさも難しかったと思うし、ライラの場合はまだ色々変化するといっても、変化しすぎなのには可也戸惑った。結局最後まで、その変化する法則性を見つけられなかったのも筆者的には残念。ダイモンに拘らないといいつつも、やはり作品大きなキーポイントだから、それに引き摺られるわけだから描写的にもちょっと邪魔だし厄介だった。
そんな中で、出演陣はすごい人たちの勢ぞろいだった。特に、ダニエル・クレイグとエヴァ・グリーンに関しては何故そんなに出し惜しみしているのか残念(というか可也の消化不良)だった。二コールとは連作の共演であるダニエルに関しては、やたら「インベーション」が被ってしまったのも事実。それをいえばエヴァも同じなのかもしれないが、パラレル・ワールド効果というか、キャラが違うからか、「カジノ・ロワイヤル」とは流石に混同しなかった。そのほかにもクリストファー・リーなんかが出てくると一瞬「LOTR」なのかと思ってしまうから、この辺りも筆者の頭の中はパラレル・ワールドには程遠い狭い狭い世界なんだなぁと創造力の低下を反省しつつの鑑賞である。二コールは美しかったが、それよりも、完全にダコタ・ブルー・リチャーズに食われましたな今回は。認めたくないけれど、ダコタの存在感は二コールを上回っていたと思うのは筆者だけ? 最も、「ナルニア国物語」のように、主役より女王の方が存在感が出てしまうティルダよりは良かったのかなぁ。二コールを観にいったはずなのに、二コール以外の逸材を発見できたのはこの鑑賞の唯一の収穫だったかもしれない。
まぁエンディングは予想通り。しかし、もっとスキッと終われないのかなぁ。その辺り、やはりスターウォーズという作品は凄かったのだと、今更ながら賞賛してしまう結果であった。
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| 2008-03-20 23:39
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