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暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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ユナイテッド93 ~新作DVD~

ユナイテッド93 ~新作DVD~_b0046687_17554095.jpg公開時もそうであったが、兎に角最初から最後迄、息をもつけぬほど画面に食い入って観た。近年、こんな鑑賞体験は稀であった。勿論、時間が経つのも早く、1時間くらいしか観ていないのではないかと思う感じであった。公開時にレビューを書かなかった(書けなったが正しい??)のは、忙しなかったこともあるが、余りにも展開が早くて細部を理解できなかったこと、この物語が犠牲になった方々の遺族の貴重な証言よって製作されているということで、生半可な記事を書く訳にもいかないと思ったからだ。今回、DVD発売に併せて何度も細部を確認することによって、この作品をより理解したいと考えて今回のレビューに至った。

大きく分けて、この作品は二部構成である。第一部はワールドトレードセンターに突っ込んだ2機の異常な動向を管制センターの場面を中心に展開している。これも貴重な証言を繋ぎ合わせて作成した脚本である。そして第二部はハイジャックされたユナイテッド航空93便内部での、乗客とテロリスト達との壮絶な戦いである。どちらの場面にも共通しているのは、出演人物ひとりひとりの心理描写が見事なのであるが、これは、「貴重な証言」によるものなのだからであろう。そして、特に、後半の部分は本人ではなく遺族の証言である。旅客機と地上の、しかも一個人との交信がこんなに簡単にできてしまうという文明の利器にも驚く一方で、今まで飛行機のトラブルはブラックボックスでしか判明できなかった部分が、生々しく外部にも伝えられたえられた事実にも、この作品を構築している一要因だと考えると、文明の進化とは残酷である。また、この作品を筆者にとって、とても短く、画面に食いついてしまうシーンの連続にしてしまうものにカメラワークの臨場感がある。この作品は、カメラワークによってまるで「ドキュメント」を観ているような誤解、勘違いを与えてくれるのであるが、これが実に効果的だ。管制センターのシーンでも、カメラを固定させていないところで、フレーム外の人々の緊張感や動揺を伝えているし、例えば、比較的安定している(というか、まだ情報不足で緊張感の薄い)場所に関しては、カメラ自体も固定してあるので、その差が焦燥感となって鑑賞者にきちんと伝わってくる。ユナイテッド93便も方も同様(というかそれ以上で)、まだ飛行機が離陸していないときのカメラワークは、被写体になっている人間で全然違う。特に、乗客のひとりひとりに関しても、それぞれのカメラアングルを用意しているし、パイロットや客室乗務員も、それぞれのフライトに対するその時の思いがきちんと伝えられている。テロリスト達だけが、既に、異常興奮を何とか抑えようと(冒頭コーランのシーンからもそうであるが・・・)している心境も、すべて、カメラワークひとつで他の効果を殆ど使わずにこなしている。この作品を技術的に観る価値があるのは、なんといってもこの点である。そう、これに関してはラストまで凄かった。

しかし、カメラワーク以上にこの作品には、「人間」そのものを強く感じる。特に、乗客の団結と、それぞれが家族・友人・知人に連絡を取っている、このふたつの行為である。前者には、アメリカをここまでの大国にした根源を感じる。この段階で、ワールドトレードセンターに2機、ペンタゴンに1機の墜落を知っていた乗客は、当然進路からして、自分たちの旅客機がどこに向かっているかを悟る。そんな中、誰しもが何とかこの機だけは奪還しようと団結一致する姿勢は傍からみてもあの極限の状況下に信じ難い人間力である。情けないかもしれないが筆者には到底考えられない。又、後者に関しては、連絡で機内の状況をしっかり伝える者もあれば、金庫の番号を伝える、言わば遺言を残している者もいる。これは人間の持つもうひとつの力である「愛」である。自分以外の誰かに託す、或いは頼る、或いは願うということはすべて「人間愛」の業である。そう、勿論、事実であるがこの作品では、人間の「力と愛」を表現している。これがテーマである。そして、このふたつを根底に据え、同時に映像として前面に描写しているために、例えばオスカー作品の「クラッシュ」が、ドキュメントの域を出なかったと批評したのと違って、大変感動的かつ、歴史的にも貴重な作品として完成したのである。

但し、純粋に「映画作品」として受け入れられない部分もある。それは多分にこの事件の現実をリアルタイムで知っているからだと思う。しかし、この作品は映画ファンのみならず、「観なくてはいけない」と力説する。


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by turtoone | 2006-12-08 22:58 | 映画(や行)