人気ブログランキング | 話題のタグを見る

暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬 ~新作DVD

メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬 ~新作DVD_b0046687_17292019.jpg最近日本では本業より、缶コーヒーのCMに登場する宇宙人という認知度が高いトミー・リー・ジョーンズ。序ながら筆者はあのCMシリーズの中では「疲れる事を喜んでいるようだ・・・」というくだりの内容が一番好きてだあるが、ふと思ったのは、宇宙人の視察だと言っているが、実は、合衆国(それもハリウッド)からの日本(の真実の姿)への視察なのじゃないかと思っている。ご存知の方も多いが、彼は映画界の中でも超エリートであり、ハーバード大学卒で、アメフトのスター選手。しかも親友はあのゴア元副大統領である。筆者も、「依頼人」「JFK」、「逃亡者」、「バットマン・フォーエヴァー」などの演技に見られるように好きな俳優の一人である。不覚にも、この作品の期待度は大変高かったにも係わらず、公開時には見逃してしまった。ミニシアターで短期間の上映だったと記憶している。また、一方でこのヒットとは程遠い作品がこんなに早くDVD化されていたのも見逃していた。最近はDVD情報誌の立ち読みも少なくなったしなぁと反省する。

もうすぐDVD化される「グッドナイト&グッドラック」と同じく、第一線の映画俳優の監督作である。但し、トミー・リー・ジョーンズのプライベートを全く存知得ない筆者としては、この俳優の理知的な部分には殆ど認識がない。例えば、キャラ的には、「バットマン」のトゥーフェース(この作品にはジムキャリーもニコールも出ている。今考えると筆者のお気に入りばっかりだ・・・)なんかが大好きなのだが、一方で「依頼人」の検事役も良い。しかし、いずれもそんなに理知的な部分は感じない。だから、この作品に関して、タイトルの奇抜さには驚いたものの、彼か監督したというだけで、期待は大きかったもののその中に「理知的」な要素は殆ど考えていなかった。そして、それは大変な間違いであったことがこの作品を観終わったときの率直な感想である。

まず、「埋葬」についてであるが、わが国のように原則は「火葬」での埋葬が法制化されている民族の慣習として、この言葉から連想されるものはごく限られる。棺桶であったり、火葬場、寺院、墓地。身内の骨を拾ったことのある人間なら誰しも埋葬に明るいイメージを持つものはいない。特に仏教が略国教と言っても良いわが国の死後の行事と先祖への供養は、とても手厚いものである。葬儀からして通夜、告別式があり、初七日、七七供養、一回忌、三回忌、七回忌と、三と七という数字を大事にし、最後は三十七回忌で漸く、「仏様」になる。一方でキリスト教的な埋葬というのは、殆ど埋葬の時に、神に召されたと神格化してしまう。
この作品で興味深かったのは、2度めの埋葬である。埋葬の形式に拘泥していない、この辺りの発想というのが、トミーの理知的な部分だと思う。

次に国境警備隊という重要な任務に関して痛烈な風刺を述べている。勿論、メルキアデスはメキシコという国境の向こう側から来た不法入国者であるが、主人公のピートとの関係から面前で文句を言うものは居ないが、死んでしまったらそんなことは関係なく、彼自身への鬱憤も含めた誹謗が開始される。一方で、任務として誤射をしてしまったノートン(バリー・ペッパー、彼の演技が素晴らしかった)は所謂平均的なこの国の忠実な市民であり、暴力的な振舞いをすることはあっても、それ以外に何か特別な性癖を持っている訳ではない。この国境警備隊員に、現在のアメリカの病巣を全て背負わせて、ピートは自身で到達することのできなかった人間としての誇りを、メルを故郷に埋葬し、彼の誇りを適える事で自らを保とうとしていることで、アメリカに蔓延る差別問題を一蹴している。特に、警備隊の知らない、川の浅瀬一本で国境を越えてしまうという部分は合衆国に対する最高の風刺ではないか?歴史に「もし」は無いが、ゴアが大統領になっていたら、彼に近いポストの準備もあったと噂されていたトミーだけに、これらの着眼点と自身の風刺・主張には桁外れの考えであり、同時にこの人間が民主党の国務長官にでもなっていたら、日本の缶コーヒーのCMどころではなく、わが国との関係も随分変化(勿論、わが国にてっては良くない方向に・・・)したと思うと、彼の主張とその頭のキレ具合は恐ろしい。

トミー・リーの初映画監督作品であるが、国境の大自然や、アメリカ・メキシコそれぞれの生活感(僅かしか離れていないのにテレビ受像機が全然違ったり・・・)を短時間と少ないカットで表現しているなど、今後の監督業にも興味津々の一作であった。脚本的にも最初は戸惑ったが、慣れてからは実に良い構成だった。また、国境近くに住む老人は上映中思い出せなかったが、ザ・バンドのレボン・ヘルムだった。これには少し感動した。


公式サイト


allcinama ONLINEの作品ページ
goo映画の作品ページ


よろしかったら、こちらにご協力を。映画のブログも検索できます。
人気blogランキング

ついでながら姉妹ブログへもどうぞ
「情報過多で悩むあなたに」
「東京の原景を探して」
by turtoone | 2006-11-18 17:38 | 映画(ま行)