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暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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プラトーン ~My Collection~

プラトーン ~My Collection~_b0046687_1072144.jpg総合芸術である映画というのは、大衆娯楽であると同時に、時に大型メディアとしての機能も併せ持つ。戦争映画、特に第二次世界大戦モノはどちらかというと娯楽的作品として伝えられてきた。世界大戦においてアメリカは正義であり良心である。そしてその精神にのっとった戦場の英雄達は輝かしい活躍をし、中には殉職した者もあった。こういう感じである。そして、(それが真実か否かはどうであれ)、映画という世界の持っている冒頭の影響力から、アメリカは国を挙げて、こと、戦争に関しては大衆娯楽という大風呂敷の中に、メディアとしての国民へある種の洗脳を吹き込んで来た。これは申し訳ないが、ハリウッドを中心としたアメリカ映画界の罪であり、過ちである。

筆者は戦争映画は正直なところ余り良くわからないし、勿論そんなに好きでは無い。要は、過去の作品はとにかく戦場のシーンが圧倒的に多いからであり、最近この矛盾点は何なのか少し研究してみようかと思ったりもしている。戦場というくくりに関して言えば、例えばスペクテル史劇といわれる歴史モノにも、勿論戦場が出てくるがはじめに戦場ありきではない。残酷とかエグイとかいう括りで考えれば、刀で首を切り落としたり、矢が瞳を突き刺したりする方がずっと残酷である。しかし、何故、昨今の戦場の方が残酷に感じるのはリアリティの問題である。筆者の年代はベトナムを知っている(勿論、戦場に行ったという意味ではない)。ベトナムで何が行われていたかではないが、その戦争自体に反戦運動という名前で大反対している行動を、日本でも良く見かけた様に、リアルタイムなものほど、リアリティを感じるのである。もうひとつには、戦争映画というのは、あまり政治を描いてこなかった。歴史モノというのはどちらかというと「政治ありき」で、主人公も歴史に名を残す人物が多く、(歴史は勝者が作るといってしまえば終わりであるが)その一過程として戦場シーンが出てくるのであるが、昨今の戦争映画は人物の描写も弱いが、政治との関わりが薄いものが殆どであった。人物描写という点では、例えば「西部戦線異常なし」などの名作では、必要以上に小隊の人間関係や、ひとりひとりの人物に焦点を当てていて、またに、ラストに繋がる部分では、暗に軍部批判をしていると感じられるのであるが、まだ政治しの関わりに関しては希薄であった。寧ろ前述したように、「パットン大戦車軍団」のような戦争ヒーローを創出することで、戦争当時の政治より、公開当時の政治的配慮を感じてしまうのである。奇しくもこの両作品はオスカーの作品賞を獲っており、前者が文豪レマルクの名作という題材も良く、又その後(1933年)の反戦映画のスタイルを決定付けたものである一方、後者の様な作品が実は筆者がこれまでの戦争映画に疑問符を投げかける象徴的な内容であることは、ここまで書かせて頂いた部分で多少、お分かり頂けたと思う。

この「プラトーン」も、オスカー作品である。作品賞だけでなく、監督賞、音響賞、編集賞と4部門に輝いた。しかも、オリバー・ストーン監督はすぐ後の4年後にも「7月4日に生まれて」で同じくベトナムを扱って2度目の監督賞を獲得している。この作品は所謂リベラリストといわれる人たちから大絶賛を受け、これまでの英雄指向の映画作品やベトナムの報道、及び公開当時の世界各地の局地戦争への介入に関する報道はプロパガンダであるという言論が堰を切った様に湧き出した。そういう意味では、映画界に「戦争解釈の自由」が生まれた様に、この後は自由解釈の作品が増えて来た。この作品で筆者的に興味があるのは、出演人物が「政治」を語っていることである。政治というのは、何も国家政治だけではなく、小隊のあり方だったり、お互いの生き方だったりしていて、それがその言葉を発する「人物成り」というところに大いなる興味を感じる。勿論、この作品が絶賛された「ベトナムの真実」という部分はセンセーショナルであったが、所謂オリバーストーンのベトナム3部作の中で、筆者的には「7月4日に生まれて」を高く評価しているのは、この「プラトーン」から更に一歩踏み込んで、一人物の人生を通しての戦争を通じた政治背景とその関わりを描いたからである。(プラトーンはその題名通り「小隊」から政治に対して発しているのであろう。)

同時にこの作品は(制作費の問題もあったかもしれないが・・・)、大変魅力的に俳優が沢山出演している。後々のビッグネームも多く、この辺りにもストーン監督の俳優を見極める「選出眼」の非凡さをも感じられる。


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by turtoone | 2006-05-04 10:10 | 映画(は行)