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暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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ミュンヘン

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この事件は筆者もリアルタイムで記憶している。いつかはこの事件が作品化されることを当時から信じて疑わなかったが、まさか、大御所スピルバーグ程の大物がこのテーマを扱うとは夢にも思わなかった。だから、この作品化の第一報を聞いたときから、近年、稀にみるほど自分の中で公開が待ち遠しい作品であった。公開直前にオスカー作品賞ノミネートの吉報も入り、まさか、監督賞は考えていたが、作品賞(尤も、今回は作品賞と監督賞のノミネートが同一)とはオスカー委員の傾向としては意外だった。ミュンヘン五輪の悲劇は自分の生活にもリアルタイムに直結していたので、例えば、「浅間山荘」や「よど号ハイジャック」よりも鮮烈に覚えている。丁度、父がドイツへ行って、この五輪開会式その他の観戦する予定だったので、家族でも心配していたり、この事件の後も、競泳選手スピッツを始め、多くの有名選手、メダル有望なユダヤ系が途中帰国するというハプニングもあった。五輪が終わってからも様々な問題が発生し、筆者の中で政治とスポーツが密接だと初めて知った出来事で、スポーツが純粋な世界で行われているという希望を打ち砕かれた事件でもあった。

それだけではないが、スピルバーグがこのテーマをどういう描写、また、どの辺りをクローズアップさせるのかは大変興味の多い作品であった。作品の冒頭は、実写との組み合わせが絶妙でありこの辺りの掴みは大変見事である。スピルバーグは兎に角「掴み」がうまい。時代考証も良く、自身が鮮烈に記憶しているミュンヘン五輪の1972年時に一気に引き戻された感覚であった。その後、五輪事件のシーンは断片的に、しかもフラッシュ・バック方式と主人公(エリック・バナ)の回想と相俟って物語が進行していく重要なファクターとして使用されている。しかしこの作品で大事なことは、その表現手法でなく人間がごく普通の人間として生きられるかどうかという主題について、それが自分の一生涯の中で完結することがなく、子々孫々の永代なテーマだとしても、その繋ぎの一要因としての自己の存在を「誇り」に思うことが「人生」であり「運命」であるということを受け入れている民族がこの時代に存在するということである。そして、同時に、このことは、過去の人間の歴史の中で、ありとあらゆる「民族」が勝ち取って来た「権利」であるということで、たまたま、今は「中東」という地域(地域性が問題というだけではないが・・・)に、その途上の民族(作品を尊重に、敢えて「国家」という言い方はやめた)が居るということである。彼等の行為は(勿論、テロリズム行為の正当性を善しとはしない)この何千年間の間、人間が地球上で繰り広げてきたことのプレイバックに過ぎないのである。

中東問題、更にそこにユダヤ問題が絡まって来ると、島国の住民という免疫力しか与えられていない日本人である筆者には正直なところピンと来ない。中東やユダヤ系に友人がいない訳ではないが、言葉・信教・風習の壁は大きく本質的な付き合いは無い。但し、一緒に酒を飲んだり、下町を歩いたり、歌を歌ったりした経験はある。それくらいしか出来ない。それくらいでも良いと今までは思っていたが、「人間が繰り返して来たこと」の渦中に今でも関わりのある友人に、果たしてそれだけで良いのかという自問自答が新たに生まれてきた鑑賞であった。それ以外にも色々な事、それも自身にも人類にも大事なことを沢山盛り込んだ作品であるので、何回も鑑賞したい映画である。これは中東の問題でなく、東アジアの一民族として子々孫々の為に自らを考えなければいけないという使命感をも喚起させる内容である。テーマは奥深い。

演出、美術、効果は満点である。勿論、問題提起、そしてこの作品、出演人物が全て素晴らしい。主役のエリック・バナや、ジェフリー・ラッシュ、ダニエル・クレイグという著名俳優だけでなく、他民族・他人種すべての俳優さんの演技が素晴らしい。これだけ多くの他民族俳優が一堂に会した映画作品というのを観たことがない。正直、3時間を越えても、冒頭五輪のシーンをもう少し長く、強調して欲しかった(映像が良かったので)と思ったが、それはリアルタイムにその時代を鮮烈に記憶している筆者の身勝手な要望であり、構成としての時間配分も実に的確であった。

2000年の「グラディエイター」以来、筆者評の「特A」作品(95点以上/100点満点)である。


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by turtoone | 2006-02-04 23:50 | 映画(ま行)