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暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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ショーシャンクの空に ~My Collection~

ショーシャンクの空に ~My Collection~_b0046687_19191266.jpg公開当時は本国でも然程注目をされたわけでもなく、オスカーに7部門ノミネートされた辺りから多少話題にも上ったが、日本での公開は半年以上も遅れた挙句、松竹が配給したにも係わらず時期がずれたり、中途半端な興行となったが、日本では「外国映画賞」を色々獲得したことから、いつの間にか映画ファンの間では「最高傑作」というレッテルが貼られる様になった作品である。今でも「最も好きな映画作品」と聞かれてこの作品を上げる人はかなり多い。かくいう筆者も、やはり10本好きな映画を選べと言われたら、多分7~8番目にはこの作品を思い出し、筆記回答方式なら何の躊躇いもなくそこに記述してしまうだろうと思われるが、今回は「公開20周年」というDVDボックスも発売されたことだし、良い機会なのでもう一度、この作品を振り返りたいと思う。

敢えて書く必要も無い事ではあるが、この作品の主題は「希望」である。そんなことはご覧になった方なら誰でも分かるし、映像の中でも何度もこの言葉が出てくる。最初の観たときのことはそれこそ20年前なので忘れたが、その後の鑑賞でも引っ掛かったのは、終身刑で刑務所に入れられた人間の「希望」といえば、当たり前のことであるがたったひとつ、「塀の外へ出る」ことしか浮かばない。しかし、この物語は早々にその希望の結果を、ある受刑者の仮釈放を通して断ち切ってしまう。この「展開」がこの物語の所謂「刑務所モノ」と違うところである。面白いことに多分殆どの鑑賞者のエモーショナルを一度ここで断ち切るという手法は余り他の作品では感じられない。しかし、ひとつには、それがスティーヴン・キングという「ホラー作家」によって書かれた作品だというところが大きい。ホラー小説や映画はそんなに親しみが深い方では無いが、この手の物語というのは何が面白いかというと、「常識からの隔離」、「常識からの逸脱」とそれに「常識への逃避(回帰)」である。つまり、一般的に日常の常識という枠の中では考えられないことがそこで起こっているのにも係わらず主人公や読者は、それを常識だと勘違いをしてしまう技法。これに填まれば填まるほどこれらの小説は面白いのである。読者が自身自らを常識から隔離して、逸脱(離脱)していく様が、この世界に没頭することである。しかし、最後までその常識外の世界に留まることは許されない。つまりはそこから逃避させられる技法に填まる。物語の中では逃避なのだが、現実社会では回帰である。「我に帰る」のである。つまりはこういうモノを書く著述家が卓越しているところは、こういう読者の存在位置を自由に動かすことの出来る業を沢山持っているということである。これは表現方法が違うが、例えば催眠術を操ることり出来る人間と似ている。すべては常識ではない世界を体験させることのできる「マジック」なのである。スティーブン・キングが原作である「刑務所のリタ・ヘイワース」で自身の技法の一部をこういう形で記したことと、それを見事に映像化したフランク・ダラボンとの作品のコンセプトの一致が、前述の様に途中で鑑賞者の方向性を断ち切るという極めて斬新な作品製作へと繋がった。この辺りは流石に同監督が「エルム街の悪魔」で脚本担当以来、原作者のツボを隅から隅まで知り尽くしているからこそ出来た部分でもある。又、筆者はキング氏の作品を沢山読んだことは無いが、彼の作品にはホラー小説でも「希望」ということが多く書かれているらしい。要するに持ち続けてこそ「希望」であるし、何かあっても失ってはいけないものが「希望」だということを氏から学べるのではないか。映画でも。結局、希望を持ち続けた者だけが勝利をするという結末にほど近い。

一般的には「グリーン・マイル」、「マジェスティック」と並んで、ダラボン3部作とも言われるが、「希望」というカテゴリーからするとこの作品が一番その部分を強く押し出している。要は「希望」は与えられるものでなく、個人が自分のために持ち続けるものであるという解釈をこの作品内では押し通している。勿論「そうでない希望」という部分で、「マジェスティック」などは主人公自体が周囲の「希望」となっている描き方をしている点から、キング独特のコンセプトである「希望」が、ダラボンにも継承されたと考えて妥当だと思う。

俳優陣も、作品のテーマ以上に自己主張していない点も好感が持てる、バランスの良い作品だ。但し、誰の演技か良かったかというと、それはティム・ロビンスやモーガン・フリーマンでなく、ウィリアム・サドラーである。なんといっても「ダイ・ハード2」で凶悪なテロリスト役を演じてから、冷酷な悪役のイメージが強かったが、この作品では元舞台俳優という経験を見事に活かした人間味溢れる演技力を見せている。

名作は多くの論評を必要としない。やはり今回の鑑賞時の採点でも筆者にとって特A作品であった。


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by turtoone | 2005-08-28 19:24 | 映画(さ行)