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暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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ショコラ ~My Collection~

b0046687_15102280.jpg無国籍○○という言葉がある。例えば無国籍料理などの定義に関しては詳しく知らないが、筆者なんかだと美味しいものに定義や薀蓄は必要ないと思う。○○料理という言い方は、その○○の中に言葉が入ってしまうことで、その料理の本質よりも各々の先入観を優先してしまう点にある。例えば、日本料理だと「低カロリー」だとか、タイ料理は辛いとか。しかしこれも経験則が多いと、その中で部分集合を作り、ある程度特定の範囲がより漠然としてくるが、逆に例えば一料理名だったり、香辛料の銘柄だったりすると、それは完全の特定されてしまう。そういう意味でこの作品は「無国籍映画」であるということを述べたい。この作品に対して何か先入観をもってしまうと、きっと良い感動は得られない。又、どんな感想や感動を持っても、この作品には正解・不正解が無い。そういう映画作品である。

この作品が見事なのは、まず冒頭、ミサのシーンの5分くらいで、舞台設定を全て簡潔に紹介してしまうこと。村の大きさ、1959年であること、席順と牧師スピーチによるに伯爵の位置付け、絵の得意な少年とその母、犬を連れ込む老人等々、登場人物の紹介とその因果関係、更には、母子の訪れを北風の猛吹雪に例えて、事実上のこの村の主である伯爵が新しい風が入ることを忌み嫌うこと。序ながら、その伯爵とミサという古典的な部分を根底では嫌っている先進的な老婦人のところへ、部屋を借りに母子連れのよそ者が来るところでいよいよ物語の幕開けとなる。映画の冒頭というのを設定説明に使用する作品は多く、ある意味で映画制作の王道である。しかし、この短時間で、こんなに簡潔に説明してしまうものはごく僅かである。お陰で、すぐ次のストーリーに自然に入っていけるのである。

一応、1959年ではあるが、一方、この作品の時代考証には、時代を特定させなくて良いという主張が随所に感じられる。老紳士との会話で、未亡人が夫を戦争でなくして40年以上も喪中でいたり、レノ伯爵の提唱する20世紀には農作物の肥やし程度にもならない中世的権威主義の名残り、或いはこの町に住む女性の考え方は、この町の場所と共に年代をも暈かしにかけている。冒頭でも無国籍と述べたが、この作品は、色々な解釈を鑑賞者に自由な発想を持つことで許している、許容範囲の広い作品であることがこういう時代考証の部分で顕著である。

その色々な感想を持ってよいという部分で今回の鑑賞でもっとも強く感じたのは、この作品に出てくるのは皆「強い女性」。それも自分たちの生き方を貫き通す女性の意思と辛抱強さである。幾ら使命感があるといっても見ず知らずの町に次々と新しい店を出してきた女性、旦那から逃れて本当の生き方を求める女性、母と違い真に献身的な人生を全うしようとする女性、人に甘えるのを恥と考え病と闘う姿を誰にも知らせない女性、そして母の行動を肯定しつつも半ば想像の世界を誇りにする少女である。そして、その女性を根本から支えるのでなく、チョコレートでいえばちょっとした味付けになる、一滴・一粒の香辛料的にな役割りが男だと言っている。ストーリーでは何度か重要な場面に「北風」が吹く。そして、エンディングに吹くの風の解釈は自由であるが、筆者はそれまでのジョニー・ディップが演じる役との兼ね合いから、主人公が彼を頼ることを示唆した風だと思った。だからもう二度と彼女に風が吹くことは無い。同時に、それが娘の想像の終わりにも繋がっている。又、女性を軸にしている部分は「衣装」にも分かりやすく表現されている。特に、主人公役のジュリエット・ビノシュと、彼女とお互いが理解者になりあうレナ・オリンのふたりの衣装は見事。異国から現れたジュリエットは最初のマントといい、その後の衣装といい、村の人々とは全く違う。一方レナの衣装は、彼女が自分を発見していく過程において、どんどん変わってきている。この村の設定から多分ジュリエットの洋服を借りているのだろうが、それが徐々に自分の物になっていく部分の描写は見事であった。最後の衣装では、保守的になりかけたジュリエットを超えているところで圧巻。

冒頭に無国籍といったが、出演俳優陣の国籍も多岐に亘っている。監督のラッセ・ハルストムはスウェーデン。以下、主演のジュリエット・ビノシュはフランス、ジョニー・ディップはアメリカ・ケンタッキー、ジュディ・デンチとアルフレッド・モリナという名脇役二人がイギリス、私生活では監督の妻君でもあるレナ・オリンとその夫役のピーター・ストーメアはスウェーデン、「マトリックス」の合間で撮影したキャリー・アン・モスはカナダである。そう、この作品は俳優からして無国籍映画作品なのである。

色々、まだまだ書ききれなかったが、音楽も美術も秀逸。どれを取ってみても色々な鑑賞と色々な感動を与える映画作品である。この作品、全編を通して主要人物の誰かひとりに成りきって鑑賞しても面白い。1枚のDVDでこれだけ色々楽しめる作品も有り難く、映画ファンであれば必見作品である。


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by turtoone | 2005-08-15 15:14 | 映画(さ行)