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暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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ギルバート・グレイプ ~My Collection~

ギルバート・グレイプ ~My Collection~_b0046687_1118486.jpg世間は休みモードに入っているが、筆者は何と無く落ちつかない日々である。シアター作品鑑賞も一段落、8月27日公開作品からまた少しに賑やかになって来るので、こういう機会に少し自分のコレクションに関して纏めて鑑賞してレビューを記録してしまうと考えた。夏休み(休みでは無いが)の自由研究みたいなもんだ。そこで最初は、特に理由は無いがラッセ・ハルストレム監督作品特集。彼の作品は色々と考えさせられるところが多いのと、見るたびに鑑賞者のその時点のスタンスで、感動が変わってくる部分を強く感じることができる。そう「新たな発見、新たな出会い」である。そうはいっても、彼の作品をこんな形で記録するのは始めて。大概が一言メモしか残っていない。この「ギルバート・グレイプ」に関しての一言は「出演俳優が皆素敵、特にディカプリオは将来的逸材」と、これは上映当時の感想でそう書いてある。ディカプリオの演技に関してはこのブログでも度々触れているが、確かにこの作品最初に観た公開当時は、本当にその症状を持った俳優と思ったくらい(それ以前の彼の出演作品を見たことがなかったので・・・)である。その後、彼は本当に「役柄」を研究している熱心な俳優である。ジョニー・ディップに関しては、「プラトーン」、「シザー・ハンズ」で既に知ってはいたが、以前にも書いた通り、ディップの俳優としての良さを発見したのは、お恥ずかしながら最近だから、この鑑賞はそういう意味でも「新しい発見」が出来ると期待していた。

今回、この作品鑑賞で感じた点はふたつある。ひとつは、「青春の旅立ち」である。ジョニー演じるギルバートは、グレイプ家の次男であるが、父の他界とそれに伴う母の変貌、長男の逃避、そして弟の精神疾患等に献身的な努力をしている反面、現実はそれを理由に自分を偽っている。しかし、ベッキー(ジュリエット・ルイス)との出会いや、彼を取り巻く環境の変化、母の生死を掛けた大英断で、結果本当の自身を求めて旅立つ。そう、前向きに生きなければいけなかったのはギルバート自身であるということを家族や廻りの環境から教えてもらう。失うものは大きかったが、それはすべて、自分で築いた物ではなく与えられた物であることの本質を身心に培ったギルバートが一段と大きくなって本当の人生に旅たつという話である。過去にも色々な「青春の旅立ち」ドラマは見てきたが、これほど力強く、且つ、これほどひとりの人間を追及し、説得力のある内容は他に例がない。

もうひとつは「アメリカ」という国家である。この国は大きな括りで言うと「合衆国」という多国籍民族の集まりであるが、しかしそれがイコール「国家」ということでは無い。本当に国家を形成しているのは、この小さな町で起こっている様な「依存」である。誰かが誰かに必ず「依存」しているサークルであること。ギルバートは「アニー連れ」を条件によろず屋で働いている。大型スーパーが出来ても、よろず屋は「お得意様」で持っているがそこには買い物以上の顧客サービスがある。更にそのサービスを受けている旦那からはそのバーターとして、保険加入を勧められる。(一方で友人には葬儀屋もいる) そういう日常に常に疑問を感じている部分が、例えばギルバートの「家の改築」という部分にも現れている。そこに、まったく依存性の無いベッキーとの出会いにおいて、彼は補強ではなく再建を考えていく。さらに付け加えれば、このひとつの家族を通して、家族という最小単位の集まりが合衆国国家を形成していることを強調し比較している。

この二つの部分がクライマックスのギルバートの大団円に繋がるところで、この作品は最大の感動を呼び起こす。この、主人公のみの内面描写だけに集中せず、廻りの人間関係の表現を、巧みな台詞回しと連繋、それにちょっとした行動や仕草を用いて因果関係を顕わにしていく手法は、この監督の独特且つ、秀逸な部分であると考える。

演技的にはディカプリオだけでなく、出演者の誰もが自身を演技的に代表する作品であるが、これは監督と作品のコンセプトがしっかりしているからである。映画ファンなら一度を観て欲しい作品である。


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by turtoone | 2005-08-14 23:39 | 映画(か行)