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暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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ラスト・エンペラー ~My Collection~

b0046687_1719338.jpg1987年、伊・英・中国合作で第60回オスカーでは作品賞・監督賞を始め9部門を独占した作品である。まさに映画における西洋と東洋の文化融合である。公開前には個人的興味として、なぜこの時代の中国を選んだのかは疑問であった。映画という媒体で、4000年の悠久なる歴史をもった中国を世界に紹介するこの限られた機会に、もし筆者がテーマを選べる立場にあったとしたら、やはり、「秦の始皇帝」や「項羽と劉邦」、月並みだが「三国志」、それに「玄宗皇帝と楊貴妃」とか、そういうテーマを選んだと思う。しかしこの時代、しかも「西太后」ではなく、「愛新覚羅溥儀」である。確かに作品名のように「ラスト・エンペラー」という観点からいけば題材としては面白いかも知れないが、正直鑑賞前は戸惑った。

実際、作品を鑑賞してまず思ったのは、この作品は溥儀を描きたかっただけでなく、20世紀まで残っていた「皇帝」という歴史上の定義と存在を、激動の20世紀を送った中国の歴史と併せて取り上げたかったのだということが分かった。筆者が前述した中国の歴史よりも地味な時代である一方、現代に残っていた最後の中世的権威が失墜していく過程として、教科書には決して語られない、見事な歴史的資料と証言を残した作品になった。

考えてみると中国という国は、ヨーロッパや西アジアと陸続きであったにも関わらず、大変独自の歴史を歩んで来た。それもご存知の様に、シルクロードを仲介し、西洋とは陸でも海でも積極的に交易があり、日本の様に島国で多くの地域と交易がし難かった訳ではない。しかしながら、18世紀までは、国境を脅かすのはモンゴル地域からだけであった。そのために世界にも稀な歴史を歩んだ。「天子」という考え方も特有である。日本の皇室は、「天皇家」という神武朝に始まるひとつの系統であるのに、中国では支配者が皇帝となり、広い国土を統治した。元朝のようにトルコを超え、ヨーロッパまで勢力を伸ばした国もあったが、それ以外はやはり国内に大きな脅威を抱えていたのか、現在の中国という範囲内での勢力維持に努めるのが(勿論、それでもこれだけ広い国土であるが・・・)精一杯であった。確かに前漢の後の時代では「漢王朝」の系列というのがこの国での「正統的」な皇帝の血統の様に認知をされていたものの、日本や韓国のように然程、単一でも単純でも無い。だからこそ、ヨーロッパが自由主義・民主主義になった後でもこの「権威ある皇帝」は残っていたのであるし、20世紀、厭、21世紀になっても、ちょっと世界に例の無い国家体系を作り上げているのだろうと思う。そういう物をすべて総括した映画作品であるという点に高い評価をすることができる。

そして、全編を通して兎に角凄いのは「美術」と「人の数」である。作品の中で溥儀の家庭教師であるジョンストンが、皇帝の日常生活を支えるための膨大かつ過剰な「数」を羅列する台詞があるが、まさにそれを忠実に映像表現しているかの様なエキストラの数であり、贅沢な衣装、どこから集めたのか豪華で貴重なクラシックカー、沢山の宝飾品等は必見である。

又、この作品には公開当時より物議を醸した、実写の戦争映像が挿入されている。確か、日本公開では、中国兵が射殺される実写映像は一部がカットされたと記憶しているが、DVD版ではオリジナルを使用した。又、この作品には、坂本龍一、高松英郎を始め日本の俳優が沢山出ているが、満州国建設のシーンではみるからに「悪役」としていい味を出している。これを見る限り同じ国民でも、当時の日本軍の脅威と異様さ、更には愚かさを鑑賞することが出来る。

この作品も筆者評価は高い。但し、前述の様に単に溥儀という人物を描いたからでなく、タイトル通り、皇帝という権威の消去を描いた貴重な歴史的資料だからである。


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by turtoone | 2005-05-30 18:29 | 映画(ら行)