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暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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マイノリティ・リポート ~My Collection~

マイノリティ・リポート ~My Collection~_b0046687_238404.jpgスティーヴン・スピルバーグとトム・クルーズという夢のような大物コンビの始めての共演作品である。スピルバーグ監督作品というと、それまではハリソン・フォードとか、マイケル・J・フォックスというところがよく出演しているのというイメージがあり、また、丁度20世紀末から21世紀にかけては、やたらと「製作総指揮」という係わり方が多かった頃である。ディカプリオとトム・ハンクスという大物俳優との共演となった「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」で話題をさらったが、並行して監督していたのがこの作品である。公開は「キャッチ~」より遅れたが、この作品は製作期間も長く掛った。一方のトムの方もこの時期は出演よりも製作面での関与が大きく、出演した大作という意味では「M:I-2」以来となり、公開前からの期待が大変大きい作品であった。

作品全体を通しては完成度が高く、十分に映画という土壌でも満足のいく内容になっている。しかし、細かい点でいくつか気になるところもある。

トム・クルーズの変身願望に関しては、以前に「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」のレビューの際に触れたが、この作品でも、一時的に顔を醜く出来る注射というのを手に入れて、実際にそれを使用している。角膜センサーで人間を特定できるという設定の時代に、何も、顔を替える変装をして何になるのだろうかと思う(実際に作品の中でも、これを使う効果というのは然程無い)し、そういう発想が生まれるという時代背景の必然性が何も感じられない点から、どうもこのシーンに関しては、トムの変身願望だとしか思えない。更に、言えば、手術をしたトムが、12時間目が不自由な時間があり、その時に、誤まって腐った飲食物口にして吐き出すシーンがあるが、これも解せない。この辺りは、観客にも面白いと思えるものでもないし、物語の進行上も全く必要性を感じないというのが本音なのであるが、どうも、筆者は勝手にトムの中にある「グロテスクな願望」だとしか説明が着かないのである。

作品の時代設定は2054年である。これで、とても興味深いのが、同じスピルバーグ作品の「バック・トゥー・ザ・フューチャーPART2」との比較である。こちらは2015年という今から10年後(PART.1数えると30年後)の設定だか、残念ながらこの先10年であの映画に描かれている様な社会になるとは、全く考えられない。というか、筆者がいつもスピルバーグ作品の未来描写で関心するのは、「交通システム」である。世界的にも、大都市に人口が集中するというのは世の中の常であり、要はその主要基点をどのように歴史の中で替えていくかで、人口が移動する。現代も未来も、人口が集中し都市が大きくなればなるほど、交通システムというのは常に深刻な問題である。「バック~」では、自家用車が空を飛んでいることになっているが、「マイノリティ~」では、時代的には未来なのに、空を飛ぶクルマというのは出てこなく、代わりに、壁面をクルマが移動するという、「縦」の要素が出てきている。この辺りが同じ監督作品だけに興味深い。2054年という時期では、まだクルマが空を飛ぶのは難しいと分析したのか、道路に関しての新しい考え方を提示している。恐らく。平面だけでは交通渋滞問題を解消することは出来ずに、そこに平面を縦にすることによって新しい「道路」を作り出し、同時に、「自動運転」という現実的な考え方を導入して出来上がった未来の交通網と分析することが出来る。スピルバーグ作品はこういう細部の設定に感心できるものが多く、これもそのひとつである。

未来をテーマにした作品というのは、ついつい、鑑賞側がまだ知ることのない世界ということでその時代設定に興味を持ってしまう。(これは大規模な歴史劇大作や、ファンタジーも同じである)そこで、肝心の作り手からのメッセージを受け止められなくなることが多いが、この作品に関しては、例えば、2054年という時代を感じさせない部分が沢山あり、そういう部分に大事なメッセージを織り込んでいる。例えば、トムが転がした球体をコリンが受取るシーンなどはその行動を通して、一端現実に引き戻しているし、前述のクルマに関しても、郊外は現代と変わらない道路を走っているシーンを出すことによって、観客の思考を現代に引き戻している。その辺りのコントロールは絶妙なテクニックである。概していえば、筆者がスビルバーグについて最も評価が高い部分は、こういう観客の「コントロール」である。製作者として、何を一番見てもらいたいかが明確で、さらにそこを観てもらうための手法について様々な工夫を凝らしているということに秀でている監督である。このプレゼンテーション能力というのは、大いに参考になり、また、学ぶべき部分が沢山ある。

俳優に関しては、コリン・ファレルにこの時点では、後々の期待度も含めて、かなり高い評価を下したが、このブログ内のレビューでいえば、「リクルート」「アレキサンダー」は、残念ながら筆者の評価は低い。サマンサ・モートンの神かがった演技はこの作品でも顕在。これからも出演作が楽しみな女優である。

そして、この最高とも異色とも取れるコンビが「宇宙戦争」で共演する。何をしでかしてくれるのかという興味は今から尽きることがない。


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by turtoone | 2005-04-03 23:50 | 映画(ま行)