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暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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ラフマニノフ ある愛の調べ

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不思議なのだが、日本人はなぜかラフマニノフ好き。モーツァルトが好きなのに、ラフマニノフっていうのも良く分からない。いいじゃない音楽なんだからって言われるかもしれないが、それは要するに何だっていいじゃないって事なんだと思うが、一方でこの国の芸術教育にもよるところである。それでもって、美術は印象派が好きだっていって、ルノワールだとミーハーっぽいから、ちょっと理知的にセザンヌとか、美的にドガとか、少数派でシスレーが良いなんて言ってみせたりしている。兎に角ハチャメチャな芸術観には、それで良く正常で居られるといつも関心する。ラフマニノフに戻れば好きな曲の殆どはピアノ協奏曲第2番。日本人的一般知名度もベートーベンなら5番、ブラームスなら1番、モーツァルトなら40番、ラマニノフなら2番(セルゲイはシンフォニーではないが…)と言う感じ。これも良く分からないが・・・。ただ、ウォルフガングに沢山有名な曲があるのと比較して、セルゲイはそんなに沢山曲があるわけではないからだろうが、でもピアノ協奏曲第2番って例の逸話がある以外はそんなに日本人が好きな旋律かどうかは疑問である。そうそう、なぜそんなことを言っているのかすというと、漸くここのところ落ち着いたが、この作品はミニシアターだからかもしれないが、連日混雑していて中々好きな行きたい時間に良い席が取れなかった。

だから可也無理な時間で鑑賞したのだが、良いと思ったのは最初の演奏会の部分だけで、後は全く面白いところがなかった。同時に何を描きたいのか不明瞭であった。さらにいうのであれば芸術家とは偏屈が多いが、彼はそれ以前に駄々っ子であるということだけが印象づけられた作品であった。邦題に「ある愛の調べ」というからには、彼の音楽をどのように誰が支えていったのかという興味が沸くわけであるが、そんな愛が満ち溢れたという以前の超自己チューであり、音楽的に行き詰っても自分を省みることを しない行動。このことが事実がどうかは別にして、今までラフマニノフに抱いてきた良のイメージを一転させてしまう内容でもあった。懸命な日本人ファンはこれを機に、イメージだけでなく、彼の音楽性を評価して欲しいものだ。

但し、物語中には可也興味深い部分もあった。リスト以上の才能といわれ。リストは作曲家としては二流という発言があったが、これは注釈が必要。というのは、作曲家よりも演奏家を上に見ているところが感覚的に違うという誤解をお持ちなってしまう展開であるが、ラフマニノフの音楽の才能で筆者がその卓越したものをひとつあげろといえば「編曲」である。彼は、ピアニストであると同時に偉大なる編曲家であった。特に独奏のための編曲は素晴らしく、バッハ、シューベルト、チャイコフスキーと数が多い。それから、チャイコフスキーが尋ねてくるという設定があったが、彼は既に19歳で歌劇「アレゴ」を書き、初演でピョートルから絶賛されているから、これは少し時代がおかしい。また、亡命の時期とアメリカツアー、及びロシア革命の時系列も少しおかしかった。そのアメリカンツアーで、スタインウェイ社がパトロンで、なるほどこの会社がこうして名を上げて来たのかという経緯には納得。20世紀初頭からアメリカは広告の国であり、こういう手法がいともたやすくマスコミ、ひいては巨大メディアに継承されたために、現代までのプロパガンダ大国を作り上げたピエロだったということが明解である。スタインウェイは今でいう、ベヒシュタイン、ベーゼンドルファーと並び称される言うビアノの3大メーカーであるが、リストがベヒシュタインを支持、ドビュッシーに至っては「ピアノ音楽はベヒシュタインのためだけに書かれるべきだ」とまで言わせており、また、ベーゼンドルファーは各国の皇室ご用達品だったのに比べて、スタンウェイはピアノ作りが根本から違っていたために幾度も経営に苦労をした。前2社はそもそもがチェンバロメーカーで、音響的に残響豊かな楽器つくりをコンセプトとしていたのに比べ、スタンウェイはアメリカを市場と考え、中規模なコンサート会場でのビアノ製作に目指したのが所以である。(因みに筆者の家にあったのはベヒシュタインのアップライト、宝の持ち腐れであった。今も実家に20年以上調律していない家具として埃を被っているはずだ。) ラフマニノフは広告塔として新しい楽曲を「このピアノから生み出した」ことに価値がおかれる猿回しの猿だったわけで、そう思うと、なるほど、欧州やロシアでなく、アメリカ直輸入のクラシック音楽であり、イギリス出身でもアメリカ直輸入のビートルズやストーンズと変りが無い訳で、日本人が「好きな訳」だ・・・。このスタンウェイ社との経緯が分かったことだけが、筆者のラフマニノフに対する新しい発見であり、あとはマイナスイメージが大きく(そんなに大好きな音楽家ではないが・・・日本人なのに。だってピアノ協奏曲ならヨハネスやピョートルの方がずっとずっと旋律も技法も上じゃない?)正直、内容はどうでも良かった。

残念なのは、音楽家を扱っている割に、音楽が良くなかったこと。これはもう論外。最後のテロップで芸術的創作で事実と異なる旨のエクスキューズがあったが遺憾。事実の究明こそ芸術の追究であり、追究のない芸術的創作なんていうのはは無い筈だ。


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by turtoone | 2008-05-24 23:07 | 映画(ら行)