暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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紀元前1万年

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この作品を製作するにあたり、かのローランド・エメリッヒ監督は「歴史は映画の教科書ではない」と断言している。だからこちらも細かな歴史的考証に全くツッコミを入れる積もりは無かったが、いざ鑑賞をすると、そもそもこの映画作りに関しては前作同様、もうこの「なんでもあり」体質には、嫌気がさしてきた。ツッコミ云々より、鑑賞を中止して大いびきをかいて寝てしまおうかと思ったほどである。

そもそも人間の起源とはいつのことか。2001年に発見された「トゥーマイ」は定説を覆した頭蓋骨といわれ、起源は500~600万年前の東アフリカから、700万年前のチャド(中央アフリカ)に訂正されたのである。現代人より大きな脳を持っていたと言われるネアンデルタール人の滅亡が25000年前、言語能力が低かったのでクロマニョン人に滅ぼされたというのが一番新しい研究により導かれた説である。それで、問題の紀元前1万年というのは何かというと「氷河期」である。この最後の氷河期が終わるのが今から10000年前、つまり、BC8000年であるからにして申し訳ないがこの作品は設定からしてもう駄目なのである。多分10000という数字が限が良かったに過ぎないというその程度なのだろう。歴史的考証以前の問題である。また、ピラミッドも色々言われているが、筆者が注目したのはそれよりもスフィンクス。あの顔といい大きさといいどうみたってカフラー王の大ピラミッドにあるスフィンクスである。ピラミッドと違い、スフィンクスはそれぞれ顔が全然違うが代表的なものはカフラー王のピラミッドを守るあのスフィンクスであり、最早代名詞にもなっている。このあたりは検証が甘かった。ようするに、一応総合芸術を担う映画人が、こういう短絡的なミスを犯すというのは、一映画ファンとしてだけでなく、絶対に許せない初歩的な誤りであろう。前作といい、こういう基本的な所は「自由解釈」と開き直るのではなく、映画人の誇りとして注意して欲しい。

また、残念なことにメッセージ性に欠けていた。部族を超えた心が芽生えたという訳ではないという前置きの元に、しかし一方で神という存在の前にひれ伏す以外何もないとする恐怖感を上回る、奴隷化されたそれぞれの部族を助けるというのは単に「お告げ」だけの問題なのか。古代物というのは、つまるところ必ず出てくるのがシャーマニズムであり、しかし、それぞれの部族のいう「神」と、祟りを与える「神」が同レベルで語られるところにそもそもの無理がある。簡単に言えば自然神よりも生き神を上に見ているところが最後まで違和感として残った。このあたりは例えば黒人部族の繋がりの後ろ盾には同一の「自然神」があるというようにことを匂わせるとか工夫が欲しかったと思う。そうすれば、この欧米あたりを意識したデレーの部族(しかしティクティクって名前はちょっとないよな・・・)をサーベルタイガーだけで「予言」だと受け入れる以外に、これらの部族との境界線と、同じ大陸の部族との団結力を見事に表現できたと思うのに残念だった。それからマンモスなんだけど、集団で逃げておいて、一頭はぐれたからといって急に攻撃してくる習性を持っている動物ってちょっと現代の感覚では分からない。古代にはそういう動物っていたのだろうか。殆どが本能で行動する動物だから、そんなに戦闘本能を持っているのだとしたら、人間から集団で逃げたりはしない。それから起源前1万年のマンモスとしては顔かたちがもっと古い時代の出土の骨から復元されたマンモスだったのも残念だった。最近の調査で、マンモスは狩猟で滅亡したのでなく、植生の変化か伝染病の説が強い。前者は氷河期が終わり、海面温度が10℃以上も上昇したことによる食料不足、後者は人類がアメリカ大陸に上陸することによる家畜から発生する伝染病という環境の変化である。だが家畜らしき動物は集落に見られなかったから後者ではない。それから例のピラミッドではマンモスを家畜として使っていたが、これは「L.O,T.R」でやはりトロルを家畜的に使っているシーンと同じくらい笑えた。これではマンモスでなく、ただの象ではないか。この映画では最も大きなみどころのひとつ「マンモス」がこういうの部分で自滅してしまったのだから、他の部分はどうでも良いと思う。

ただの娯楽大作だとするのであれば、紀元前1万年なんてタイトルで時代を特定してしまうのもおかしい。だから筆者はそうでなくメッセージ性を期待したが、「ID4」の様なメッセージには、前述した理由で繋がらなかったというのは、如何に作品の土台作りが大切だということを教えてくれた。少なくとも歴史は映画の教科書ではないのなら、そうでない分野の作品を作れば良いのだし、中途半端なメッセージとしてしか受け取れないような出演人物の構成造りが如何に無駄であるかがよく分かる作品である。そういう意味では、ほんの少しだけ歴史考証をきちんと構築していれば、(というか、監督自身が知っていれば)きっと彼なりの気づきによって、メッセージ性の高い作品になったと思うと残念だ。彼は、そういう資質のある監督なのだから。

そうそう、不覚にもいびきはかかなかったが、オリオン座を見て「Little DJ」を思い出してしまった。


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by turtoone | 2008-05-06 19:08 | 映画(か行)