暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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大いなる陰謀

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とにかくメッセージの多い作品だった。その場の台詞やカット毎には良く理解でき、受け止められたのだが、実際作品を観終わった段階で、ではトータル的に何が残っているかというと、鑑賞中に受けたメッセージを集約されたものが何一つ自分の中に残らなかったという珍しい作品鑑賞になった。なぜだろうかと自問自答したことを下記に述べてみたい。

まずは、国民とか世論とかは、もうアメリカには必要ないのかということ。翻って、日本だって重要なことは、一体だれが決めているのだろうか。特に昨今日本でも一番気になるのは「国民は納得しない」とか「国民が怒ってますよ」いう「国民」の大安売り。政治家もマスコミも皆この言葉を使う。政治家に至っては、与党も野党も、場合によっては区・市議会議員のレベルでも言われる。この場合の国民って一体誰をさしているのだ。マスコミに至ってはもっと卑劣だ。とにかく「こんなことでは国民は納得しませんね」っと、国民を出汁にして勝手な議論を振り翳す。これがまだ、討論番組か何かの一コマなら多少は許されるものの、例えば朝のニュース、特に8チャンネルかなんかで国営放送に居場所がなくなり追い出されたKYなオヤジにまで「国民」呼ばわりされると、一体あなたは何様かといいたい。結局は国民ってそういってるあんた自身なんだろうと。しかし、それを平気で公共の電波に流出しているメディアの既に大衆感覚に麻痺している昨今の実情はそれ以上に救い難いのであるが。

そして、日本を理解すれば最近のアメリカ理解できる。欧米と日本の距離感というのは、中世と比べると600年掛かったがやっと同軸で推移するようになった。前述した原因を作ったのはアメリかでは9.11であるが日本ではというと、勿論、小泉政権である。悲しいかな国民の半分以上がその物珍しさから支持・賞賛しつつ、筆者はいかに政策のひとつひとつの検証が希薄で、実現を伴うとは思えない数々の内容に対し色々な場面で反論していたが、直近の老人医療保健改革も含めて、国民は常に政治やマスコミの都合の良い様に使われるだけだ。小泉に至ってはそのシビリアンコントロールの大変長けていたし、こればブッシュがテロに対して自分の都合で敵国を特定したに等しい。「国民の声を反映する」という国民っていったい誰だったのか?要するに、「お前だろう」と言いたい。そして、この米日の国民不在の国家運営は、既に6年間も続けられている。

そういう意味で、この作品が制作された土壌というのは良くわかるし、レッドフォードだからこそ作品化できたということもその通りだと思う。しかしながら残念なのは、伝えたいメッセージを構築するシテュエーションを絞りきれなかったということと、上院議員と敏腕記者の対話のシーンが多すぎたといえないか。筆者は、寧ろ大事なのは、この時代に自らの理想を掲げ、それを実証するために戦地に赴いた若者であるし、同時に、その責任と、学問に絶望した学生を立ちなおさせようとする教授なのであって、その視点からみれぱ、上院議員と記者の会話をカット的に処理するか、そういう「会話の場があった」ということだけで、後は各々をショット的に入れ込めば良かったと思うし、作品が短いのは良かったが、この構成を守りたいのなら説明不足が多すぎて、120分を超えるのは仕方ないが、バックボーンを明確にすべきだった。問題提起をしたにもかかわらず、最終的にあとは自分で考えろという作品の終わり方は納得がいかない。

こういうジャンルの作品は筆者がもっとも好むべき範疇であるが、前述のように、脚本よりも、メッセージありきになってしまった原因は、上院議員にトム・クルーズ、敏腕記者にメリル・ストリープという超大物を持ってきたために、このふたりのやりとりが演技的にも質が高く、また上手いがゆえに面白く、結果、当初の予定からこちらが重視されたのではないかという憶測も成り立つ。単なる会話ではなく、このあたりのシーンは迫力があった。映画の作品のサカ゜というべきか、役者が良すぎて作品の主題がぼやけてしまうというの、何もこの作品に限ったことではないが。

原題にある"Lions for Lambs"は、「愚鈍は羊たちに率いられた勇敢なライオン」という、第一次大戦時にイギリス軍を皮肉ったドイツ将校の名言である。この作品における羊とは勿論野心しかない政治家であり、ライオンは自己の意思を体現する若い命である。レッド・フォードがメガホンを取り、自らも出演してまだ伝えたかったことはここにあるはずなのに、現在の世論に麻痺せられたアメリカ人、そして勿論日本人にも、一体このメッセージがどれだけ伝わったかが疑問である。これから鑑賞を予定されている方に、ひとこと言えるとすれば、もしかしたらこの作品は原題だけ深く心に刻んでいただき、作品はご覧に成らない方が良いかもしれない。いつもメルマガを送ってくれる20世紀フォックスには申し訳ないが、残念ながら筆者はそう思う。但し、政治家の戯言やマスコミの横暴にこれからも自分を見失わないという自身がある方は、是非、ふたりの勇敢な「ライオン」を中心に鑑賞して欲しいとも思う。


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by turtoone | 2008-04-20 13:38 | 映画(あ行)