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暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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アポカリプト ~新作DVD~

アポカリプト ~新作DVD~_b0046687_1242316.jpgメルの作品は何かがある。監督作品としてはこれが多分、4作目になるはずであるが、筆者の評価も「ブレイブハート」(96点・特A作品)、 「パッション」(93点・A作品)は、いずれもその年の年間1位に評価されている程高い。今回の舞台はマヤ。だが、メルの作品だから最初っからマヤ文明の興亡を歴史の観点から正当に描こうなんてことをこの監督がするはずないということは、ウィリアム・ウォレスを描いたときからこちらも承知済み。だからどんな観点なのかは公開時から大変興味の高かったところだ。他の監督だったら、例えば、極端に言えば、リドリー・スコットがマヤを題材にするというのとは、全く異質の期待感に満ち溢れていた。
また丁度劇場公開時には、前後して「インカ・マヤ・アステカ文明展」の開催があったが、その後の発掘や研究において国の成立や民俗など色々なことが分かってきているインカ文明に比べて、マヤやアステカはまだまだ未知の部分が多く、特に出土品の年代の特定はかなり大雑把だった。逆に言えば、今現在なら色々な考察や製作者自身の思いが込められるのも事実。「ブレイブハート」同様、そういう「歴史の想像」には大きな期待ができる作品であった。

実際に、美術が素晴らしかった。とくにマヤ文明の民俗考証はそれが正しいかどうかではなく、考え方が中々のものでとても参考になった。生贄のシーンに出てくる死刑台(あの建造物は長いことピラミッドだと思っていたが… どうもこの辺りは筆者もいい加減で、マヤとアステカが混在している?)、集落の表情、儀式の進行、民衆の装飾品、そして生贄を見送る女達の踊りといい、このシーンはすべてに見応えがあった。特に、途中で描かれ、彼らが人物たちの運命を悟る壁面というのは原型が残っているのだろうか?大変興味深いシーンである。

物語の面白さという点では、皆既日食のシーン。かなり全体の時間的には無理があったが、この場面は必須である。この時代の中南米地域の文明は太陽を神と崇めていた訳だから、この儀式と自然現象の絡みで、祈祷者(キリスト教圏で言えば教皇であろう)の立場が益々強くなって行き、結果ラスト辺りの来航者をリンクさせた時に、この文明の行く末が長くないことを想定させられる。この短時間に文明国の衰退と新文明国の侵略という歴史の展開を纏めているのは良い繋がりである。

映画として歴史的な新事実発見には繋がらない作品であったが、それは、ウィリアム・ウォレスと違い、そもそもの題材に歴史的考察の価値がない時代であるから、その部分は致し方ないが、ある意味で終盤の「追いかけっこ」には大変驚いたのは事実。いやぁ、良く走ったと思う。「炎のランナー」やフォレストよりも走ってくれた。メルの作品というのはこういうサディスティックな要素が多く、「ブレイブハート」ではエグイだけであったが、「パッション」では人間の奥底に存在するサディスティックな部分を前面に押し出した。今回は、必用に「走り」のシーンを繰り返すことによって、鑑賞者をある意味で「いじめて」いる。いつまでそんなに走るのかいと・・・、というか普通の監督なら、どこかに息抜きシーンを作るのであるが、メルは殆どといって作らなかった。しかし、一方で追いかける方もずっと着いてきているわけだから、そういうことでこの時代のこの民族は「良く走った」のだということは印象づけられたのは事実。同時に序盤に出てくるシーンとの対象で、色々な要素や仕掛け、攻略で追いかける方が徐々に脱落していくのは、「森を守る」という彼らの使命をここでも強調している。アジア人とも、ヨーロッパ人とも違う、「森の民族」の描写と主張には効果的だったかもしれない。

但し、総合的にはこの後半の走りのシーンは減点にこそならないが、間延びに繋がったのは残念。結果「パッション」よりも総合評価は低くなってしまったが、それでも高得点作品である。

折しも、この作品の公開時には「300」も劇場上映していたが、作品の質といい完成度といい、メルは筆者にとっては今後も評価が高く、目が離せない存在である。


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by turtoone | 2007-12-03 23:54 | 映画(あ行)