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暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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魔笛

魔笛_b0046687_10112340.jpg
下半期最も期待度の高い作品であったが、内容その他に関しては期待通りの鑑賞であった。

しかしながら、一方で不思議で奇妙な映画体験だった。

何しろ、ストーリーはどうなるか知っているし、勿論結論だって知っている。半年に1回くらいは、i-podで聴いているから、音楽だって流石に暗唱出来るのは3曲しかないが、殆どどころか全部知っている。筆者はオペラに関しては素人同然だから、月並みだが好きなオペラ楽曲は、この「魔笛」と「フィガロの結婚」である(でも、全曲鼻で節は唄えるぞ…)

だが評価する点は大変多い。なんといっても筆者が日頃から切望している、実験的ミュージカル(この作品をミュージカルという枠に填めて良いかは別にして、)にほど近いということだ。物語の全貌がこれだけ分かっていたにも関わらず、これだけ次のシーンへの期待に膨らんでいたという映画鑑賞も面白い。尤も、オペラ自体の鑑賞だって、言語こそ違うものの、新作で無い限りは、要は知っている内容を鑑賞するのだが、オペラ通の方々は、出演アーティストをご覧になっているのかも知れないが、筆者などは(そんなにオペラの鑑賞経験などないが・・・)言語の障壁が高すぎて、内容を追うのがやっとである。その点に関してもこの作品の鑑賞は筆者にとって斬新な体験であった。特に「魔笛」には名曲、名シーンが多く、その前後関係をこの作品の設定でどのように結びつけめかは興味の高かったところであり、それに関しても満足でき、且つ、高い評価をすることの出来る構成だった。

モーツァルトを筆者が楽曲の好き嫌いは別として、最大級の評価をするのは、ひとえに、彼が宮廷でなく当時、大衆に指示されたことである。いわゆる音楽に、ポピュラーという概念を持ち込んだのは、彼が最初だと言っても過言ではない。しかし、彼の音楽はその後の評価が音楽家にも一般にも大変高かったために、ある意味でクラシック音楽の代名詞的な存在となってしまい、ステイタスとなった。これは同時に悲劇とも言える。モーツァルトの旋律はとにかく音数が多いし、その辺りが後世の音楽家たちに刺激と影響を与えたどうかは、筆者は音楽家ではないから分からないが、例えば、シューベルトの様に、所謂、テクニックに走った作曲に現れているのも事実だと、凡人としてそう思う。モーツァルトが余りにも「わかりやすい音楽」を作ったことに対して、当然のことながら、その逆も出てくるのは、芸術という環境では常にあることだと思う。

特にこの「魔笛」は、大衆劇場で大いなる指示をされた作品だ。音楽的な膨らみは、同じオペラ楽曲でいえば、「ドンジョバンニ」なんかの方がずっと面白いと思うが、一方で難しく、又、楽曲よりも舞台の大仕掛けに目がいってしまい、しかも大衆受けはしなかった。だからという訳ではないが、本作の様な、「魔笛」の新解釈というのは、後世の総合芸術である映画文化としては、当然あり得る世界であると賞賛する。まつりは筆者が「総合芸術」として求める映画という世界の中で、どうもミュージカルというものは斬新なものを見出せずに来ていた。今世紀入りいろいろな側面でコラボレーションが実現化し、産業や研究の場まで入り込んできているのに、そもそも芸術というものは、コラボという言葉が定着するずっと以前から、その融合を図ることによって新しい物を生み出してきていたのに、こと、文芸と音楽の世界のコラボは実現性の土壌が狭かったのかもしれない。メンデルスゾーンがシェイクスピアを扱ったような時代を超えた芸術家の出会いというのが、これからはもっと新しい芸術を生み出すのに必要である。

以上の点からこの作品の意義は大きい。18世紀の人たちの恋愛感情が今とそんなに違わないのであるのだから、芸術という側面からは、もっこういう観点を大事にするべきだと思うし、その点から言えば、今回のケネス・ブレナーの試みを支持・賞賛したいし、同時に、映画という土壌にある意味で降りて来てくれた、クラシック世界最高峰の声楽家出演者に対しても感謝と賞賛を述べたい。

魔笛を良くご存じの方も、また、全く知らない方の、どちらにも観て頂きたい作品である。


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by turtoone | 2007-08-17 23:14 | 映画(ま行)