暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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麦の穂をゆらす風 ~新作DVD~

b0046687_9284055.jpg昨年冬の公開作品であったが、DVDを観なおしてレビューを書きたかった。そのタイミングとして「クィーン」の直後というのも、筆者としては色々な意味で英国に向いていたので効果的ただったと思う。ヨーロッパの歴史、取分けイギリスの歴史は大変分りにくい。特に、日本人からは実はヨーロッパというところは最も理解できる範疇の外にある。その大きな要因を占めているのが、民族と宗教である。日本は(一応・・・)単一民族であり、宗教に関しては神道と仏教がある。民族の争いがあったわけでもない。又、宗教といっても、唯一絶対神ではない。このふたつの人間精神の骨格を形成する要因の違いは大変大きい。筆者がヨーロッパ人を理解できない根本がここにある。そして、ヨーロッパに対して日本人が大きな勘違いをしているのは、歴史教科書と観光である。世界史の歴史教科書は、所謂受験用のものであり、その本質を記述してあるかに関しては残念ながら乏しい。また、高度成長期以降、懐が暖かくなった日本人はヨーロッパへ大挙して観光へ出かけ、ルーブル美術館やトレビの泉などを見て、ヨーロッパのを知ったという勘違いを起こした。そのことが悪いとは言わないが、それらは上っ面のもてなしであって、入国で揉めたり、財布をかっぱらたりしない限り、その国の本質は分らない。

しかし、イギリスというのは、この理屈からは理解できないが、いつも言うように「島国」という地理的条件で、わが国とは共通点が多く、つまりは、日本人がヨーロッパを理解するには、この国の歴史と現代を分れば、それがとしも近道になるというのが筆者の持論である。(何度も書いて申し訳ないが、余り発想力が乏しいもので・・・) だが、イギリスで言うアイルランドに当る日本周辺の国家や地域は全く該当するものが無い。だから、長いアイルランド史においても、また、この作品の時代、つまりは一般的に「イギリス併合時代」と言われている時代も、更には、自由国と共和国に分かれて以降の歴史も、筆者には全く理解できない。なので、この作品も、もっと本質的にこの国のことを分っていれば今以上に細部が分るし、(正直、日本人の感覚では分らない台詞や単語が幾つかある)、さすれば多分、評価ももっと高かったと思う。残念ながら、筆者の持つ「島国理論」でも、この地域の、(極東の人間として)難解かつ複雑な歴史とその上に語られた物語の主題を十二分に理解することは出来なかった。

ただ、一方で映画作品として高い評価を与えられるのは、この作品の設定にある。つまりとしても分り易いのが、主役に兄弟を持ってきたことである。普通の兄弟である。一人はアイルランド義勇軍のリーダーであり、弟は優秀な医師である。しかし医師になる筈が、友人の残酷な最期に遭遇し、義勇軍入りをする。そして、この二人がその後、イギリスとアイルランドの間で合意された「英愛条約」を機会に袂を分かつことになる。これ以降、アイルランドは、条約によりイギリス連邦下のアイルランド自由国が建国されたが、アイルランドを分断することになった条約が批准されると、国内のナショナリストたちは条約賛成派と条約反対派に二分され、両者の間には内戦が発生し多くの犠牲者を出した。この民族主義者間の分断は現在のアイルランドの政治にも大きな影響を与えている。1937年にはアイルランド憲法が公布されエールと国名を変えた。そして、特筆すべきは、第二次世界大戦には度重なるアメリカからの勧誘を断り、中立を維持したことである。テッドとデミアンの二人の兄弟で言えば、彼等は、条約差賛成派と反対派に分かれている。そして最終的には争い違う道を行ったが、その功績と思いは民族に継承された。憲法の公布、大戦への不参加は、彼等兄弟が切実に願った歴史的結果だったのである。この兄弟を軸としてアイルランド史を見ると大変分りやすい作品なのである。構成、コンセプトの勝利である。又、それを必要以上に重視させない効果として、ダンという人物をうまく使っている。彼こそが、彼等兄弟より前に、民族のために戦ってきた人間である。この人物を兄弟の間にいれることによって、この作品そのみのからドキュメンタリー性を取り除くことに成功した。

映画作品としては、例えば、音楽(主題歌は良かったが・・・)とか、撮影、さらに編集に拘って欲しい部分もあり、それが秀逸なら更に高く評価できたかも知れないが、個人的には大変支持したい作品である。DVDを購入して、もう4回も観たが、まだまだ細部は観落としていて、勿論この作品だけでこの時代のアイルランドを理解しようなんて所詮無理な話であるが、やはり分らない箇所が多い。

ただ、作品の最後に余計なテロップ、つまりアイルランドはどうなったかとか、北アイルランドにも触れていなかった点は大変高く評価する。この物語はただ歴史を追ったのでなく、歴史に翻弄された二人の兄弟の話だという製作者の誇りを強く受け止めたからである。


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by turtoone | 2007-04-27 23:45 | 映画(ま行)