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暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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クィーン

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今年期待度第1位に上げた待望の鑑賞であったが、予想通り、いや、予想以上の出来であった。

Great Britain すなわち英国と日本は地球の中心と極東という地理的に大変離れた場所にある一方、島国であり、又王室が現在も存在するという共通点が沢山ある国として、単純な興味から真剣に学ぶ点にまで、色々と比較・参考にする事が山積している地域である。最近特に思うのは、国民の誇りというものに関して言うと、英国が大変高いのはもとより、わが日本も本来的にはそういう基盤を持ち合わせている国民であるということだ。日本は鎖国という時代が長かったが、結果論としてこの時代があったから中国のように欧米の戦略をされなかったという意見と、一方で長崎出島を中心に世界との交易の窓口を一本化し、厳選していたから、植民地化されずに対等な扱いを受けたという考え方があり、両者ともに正答に近い。王室が存在しても、唯一、英国と違うのが宗教観である。神道というのは、言い換えれば皇室の宗教であり、天皇という存在は民衆のトップであると同時に、この神道を司るトップでもあるということだ。少なくともキリスト教圏には現代英国のように形式的にはそうであっても、こういう発想はない。英国、グレートブリテンが創設したのは、1707年で、イングランドのアン王朝が継承、アン女王は初代の王位保持者である。国旗に示されるように、十字のイングランド、×模様とスコットランドとウェールズの三国を併せて現在のユニオン・ジャックになったことは有名だ。

エリザベス2世、正しくはエリザベス・アレクサンドラ・メアリー・ウインザーは連合国王のジョージ5世の第1子として誕生し、王位継承権は第3位だったが、父が病弱で早逝したために、1952年に即位して既に50年を越える。こう考えると、最早、「生ける権威」である。わが国の象徴天皇とは違い、英国における王位とは君主と政府の両方を表し、現在では英国連邦の君主であると同時に英国国教会の長でもある。チャールズ皇太子がダイアナ・スペンサーを皇太子妃に迎えたのが1981年、ダイアナ妃が20歳の時であるが、その美貌と境遇から現代のシンデレラストーリーとして世界中から憧憬の眼差しで見られた。同時に、積極的な彼女の行動は、この王室が一般に開かれる、そんな期待を一身に集めたのである。2児の母、いわんや王室後継者の母となっても、彼女を取り巻く環境で起こる出来事は、マスコミの過剰発表も重なり、必要以上に世界中に注目をされ、脚光を浴び、無責任な意見や誹謗・中傷が常に彼女のまわりを取り巻いた。一方で、皇太子の不倫問題も重なり1996年正式離婚、彼女のコメントにもあるように私人となった。又、この作品のもうひとりの主役である、イギリス第73代首相トニーブレアは、労働党党首としてその手腕と主張、更に若さを評価され同党の大勝利と共に、1997年5月2日、議会の最高責任者となる。この事件はそんな最中、その年の8月31日にパリで起こる。

この作品によると、兎に角ブレアの判断が素晴らしい。若くして、革新から首相になりいきなり世界中を驚かせた事件がこのダイアナ元皇太子妃の事故死であるが、その対応を大変早く、それは当時18年ぶりに政権をとった労働党の不安定と若いということで不安視された英国民の疑念を払拭した。しかし、それだけではなかったのが、この作品に現れている、ブレアの葛藤である。彼の葛藤があって始めて、女王を理解し同時に国民をも理解させた。同時にそれは、当時在位50年の偉大な女王のこれまでの様々な苦悩も、このブレアの取組みにより、国民と、何よりも女王自身に振り返させることに繋がった。

人物作品は、亡くなった人間を描くより、存命中の人物を題材にする方が難しい。特に、エリザベス女王とは、恐らく、全世界的に最も知名度の高い人である。そしてブレアでもある。イラク侵攻問題でのアメリカ同調作に英国での支持が下がりつつあるが、この様に作品で当時の彼の活躍を紹介されると、所詮は映画であったも世論は少し変わるのではないか。

そして本作は作品のコンセプトが良い。王室のバッシングに走らず、当時、全世界から非難された王室を悪戯に擁護するのでなく、ひたすら理解しようとした。勿論、前半のパリ事件の映像の部分は編集にもう少し工夫が欲しかった。例えば、「JFK」があれだけ古い映像を使いながら、全く違和感を感じない編集の妙をみせたのに比べると、正直、実写報道映像のクオリティはずっと高いのだから、ここは残念だった。もっとも、ここを必要以上に強調しなかったのも作品の趣旨から考えれば良かったのかもしれない。作品後半のブレアの女王を理解した台詞は、筆者的には映画史上に残る戦慄を与えてくれた。また、事故死時に出た、殺人説等の風説も全く無視した作品つくりも高い評価に繋がった。

これがイギリス映画だというのが、又、良い。欲を言えば、証言がもう少し欲しかった。それもテレビに出ていない様な、そして一般人のもので、それがあれば、歴史的資料としての意味合いも出来て、だとしたら筆者の評価も特Aまでいったと思う。物語と脚本が良かっただけに、このプラスアルファがあればと思うと少し残念だ。また、他の要素に比べると音楽がいま一つだった。美術はホワイトハウスの様に、良く一般に紹介される施設ではないから、中は良く分からないが、コスチュームデザインや女王のメイクアップなんかは、王室の私生活が現れていて良かった。

そして何といっても、ヘレンミレンの演技は、オスカー史上、屈指の主演女優賞的名演だ。


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by turtoone | 2007-04-21 23:54 | 映画(か行)