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暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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戦場のアリア ~My Collection~

戦場のアリア ~My Collection~_b0046687_11512790.jpg戦争映画というのは、鑑賞中は良いのだが、鑑賞後に残るものというのはいつも切ないことが殆どである。同時に責任感も感じる。自分達の世代では二度とこういうことを起こしていけないと思いつつも、所詮それは自己満足で、こうしている間にも、地球上の色々なところで争いが絶えないのは事実である。ただ、この作品で必要以上に認識づけられたのは、戦争という枠の中で国家とは何かという定義づけである。いや、少し違う。戦争が新しい国家を作り、その国家が次の戦争を始める、という連鎖の中で、国家が形成された19~20世紀前半というのは、実は、人間史においても全体的に色々なものが変革して行った時代であることの認識だ。その中にあって、この作品のような最前線での出来事というのが、唯一、後世に伝えるべく価値のある事実なのかもしれない。

国家とは何か。人間の歴史は争いの歴史という言い方も出来る。だから、近代の争いが大きく様変わりしたのは、ひとつに国家という括りは大きなポイントであるといえる。ただ、例外もあって、例えば中国という地域は、お上は皇帝という概念を持ちつつも、一般庶民に浸透はしていなかった。当時の国家の権威はなにかというと、升を作って、秤という、統一基準を制定したことによる。

しかし、一方で国家があってもなくても変わっていないものが戦場である。戦場の悲惨さのいうのは、国家という概念のあるなしには関係がない。筆者の母校はミッション系で、学内には「神と国とのために」という碑が立っている。欧州史はまさに、この言葉に代表される戦争の歴史を繰り返したという言い方もできる。しかし、この神と国の二つが対等に並ぶ事などは有り得なく、どちらかというと、民主主義という目覚めがあるまでは、人間は、国家という極めて不安定で確固たる保障の無いものに比べて、寧ろ神に誓いをたて、神と契約を結んだ。だから戦うということも、神への誓いという極めて個人的な物である。そして、キリスト教には、懺悔と赦しがあり、人間は罪を犯しても赦される。(又は、神によって裁かれる)それはとても個人的な側面であるが、時として体勢はこういう個人の信仰心を巧みに利用し、聖戦の名の元に大衆を動かして来たのである。

そこに、国家という、観念でなく機構が備わった時、理念として神以外の大義名分が必要になって来た。これを最初に上手く操ったのはナポレオンであり、次はヒトラーである。彼らは宗教と言う形而上の理想でなく、自由、独立、民族、独尊という形而下の理想を掲げたのである。実は、わが国の戦争に対する個々の理念もこれに近い。この点に関しては「硫黄島からの手紙」のレビューで触れる。作品の中で、同じ神を崇拝していながら、他方を否定し、自を肯定する牧師の演説があるが、これこそ、国家において、既に宗教が如何に形骸化してしまったかを物語っている。これに比べ、クリスマスの牧師の祈りは新鮮だ。

映画作品に触れると、公開中はダイアン・クルーガーの存在に賛美両論あった。筆者も上映館での鑑賞では甲乙つけられなかった。要するに、実話に忠実で余計なヒロインを登場させない方が良かったということと、ヒロインを登場させて物語に膨らみを持たしたが、歌唱の部分は口パクで、それを差し引いても良かったかどうかである。DVDで観なおすと後者が良い。前者は、ただドキュメンタリーもどきで終わってしまうことに成りかねないのと、長々と書いて来たわうに、この時代は個々の戦士に個人と国家が交錯している時代である。だから、改めてスポットを当てる人物を創作で作った方が、作品の意図が明確に出来たのである。

しかし、戦場のサッカー対決は、イングランド、フランス、ドイツというワールドカップ並の、三国の対決がもっとも印象的だった。国際情勢は大砲を持たずに、核をちらつかせずに、サッカーの勝ち負けで解決できる情勢にはならないのだろうか?


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by turtoone | 2007-04-18 11:52 | 映画(さ行)