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暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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ヴェラ・ドレイク ~My Collection~

ヴェラ・ドレイク ~My Collection~_b0046687_1145327.jpg2004年のヴェネチア国際映画祭の金獅子賞をはじめて、映画界で高い評価を受けた作品であるが、なんとも悲しく切ない物語である。
"困っている人"の為に、奉仕をするという精神は素晴らしく、それも自分の体験によるところであるから何とかしたいという思いを実際に行動しているところは立派である。だが、残念ながらこういう善道の周囲には必ずそれに乗じた、「悪」とまでは行かないがそれに程近い因子が介在するのが人間社会の営みである。ヴェラだってこの因子がなければ"困った人"の情報がそんなに沢山入る筈もなく、このような事にはならなかったかもしれない。ただ、堕胎自体からして「合法的かどうかが云々」だとはいえ、人間の生命という側面から考えれば良い事の訳がなく、だから、映画作品としてそこ迄メスを入れる事がなく、単なるメッセージだけで終わってしまったのは残念だ。ヴェラの様な人なら、自分のしてきたことが間違いだと気が付いて更生すれば、その後は"困った人"たちに自らの経験から、授かった命を育てることの素晴らしさを説いて回る人に変貌して貰いたかったと思うのは欲張りだろうか。1950年代という時代背景もさることながら、この作品の鑑賞終了後に異様な空虚感を感じたのは、そんな点からなんなだろうと思う。

ことろで、ヴェラ・ドレイクを演じたイメルダ・スタウントンであるが、この女優さんは筆者の高得点評価作品、「恋におちたシェイクスピア」といい、とても優しい演技をする。「恋におちた~」でも、グウィネス・パルトロウ演じる、ヴァイオラの心境を写し出す難しい役柄をこなし、縁組という側面では孤立していた彼女の立場の唯一の味方として作品を支え、ヴァイオラを指示する鑑賞者とのパイプラインになっていたところが大きい。この作品のこの役も彼女によるところが大きく、ヴェラのやっていることが(治療自体は心許無いが)決して悪意に取られない部分も、この女優の持つ、演技だけではなく包括能力の器が大きいというのであろうか、それに拠るところ大である。この女優さんでなければ、この作品の意図も伝わらなかっただろうと思うから、前述したように、この話題で終わってしまったことは残念だ。

ラストシーンも少し淋しい。ただ、筆者が後日談を勝手に欲張った様に、その後は鑑賞者各々に託されているのだとしたら、一鑑賞者としては申し訳ないが荷が重い。この問題は色々な国々で色々な問題を抱えているから一概にいえないが、人の問題と神の問題、人の法律と神の法律を抱えている地域は更に複雑だろうと思う。その点で島国の筆者には、道理的問題が先に常に立ち、その部分と法整備は又、違う部分がある。ある意味、人と神の法が同一視されないだけ、なんでも一緒くたにされてしまう反面、厄介な事柄が少ないという部分もある。そういう意味では、法廷シーンで、彼女自身の困った人の過去が暴露されなかった事が、この作品の唯一の救いではないか。


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by turtoone | 2007-04-07 00:41 | 映画(あ行)