ディパーテッド
2007年 02月 03日
物語はそんなに深い内容ではない。但し、アイリッシュに拘っているところがスコセッシらしい。それから大きな驚きもない。これも、実にスコセッシらしく、ラストまで想定した通り(というか、ああいうラストでなければ150分も観て来た意味がないという言い方が正しい??)であり、こういう部分でスコセッシ監督はファンを裏切らない。また、それはラストだけでなく、冒頭部分も、成るほど、スコセッシの言うとおりだと妙に納得してしまう展開である。つまりは、オープニングとラストでしっかり主張しているから、中がそんなに深くなくても印象としては残る作品である。「ギャング~」はラストが今ひとつ(というか、妙に意見を述べすぎ)、「アビエイター」は冒頭で鑑賞者に余計なトラウマを与えすぎたのに比べると、この監督にしては普通っぽいけれど、全体的に纏まって見える印象を作り出せたのは大きかった。それと、ギャングモノ作品に位置づけることのできる中では、必要以上に合衆国国家を感じさせないところも良かった。ご存知の通り、ギャングモノは、必要以上にアメリカの裏社会を描くことによって国家論に繋がるところが多く、同時に、暗に国家を遠まわしに語りたがる。勿論、それはそれでも良いし、「ゴッドファーザー」などは、それが主題みたいな作品だ。だが、この作品は「ギャング~」と同じ、一地域の、一部分で完結させている。これは、アメリカ全国家の問題なのであるという様な押し付けがましや、過剰な取り上げもしていない。この辺りが大変好感の持てる作品だったし、結果、上映時間も全く気にならなかった。そう、筆者的には、内容といい背景といい、現代版の「ギャング・オブ・ニューヨーク」だったという見方である。
演技も良かった。ジャック・ニコルソンとマーチン・シーンは流石である。ディカプリオは、今回特に何か特別に印象的な演技をした訳ではない。ただ、前半の「刑事のカオ云々」の部分で、あれだけ簡単に自分の顔を変えてしまうところは驚きだ。いよいよ安心して観ていられる域に達して来たようで、この筆者の安堵感はオスカーで賞を取る取らないの次元では無い。また、マット・デイモンも、これだけ演技巧者に囲まれると、役者というのは上手くなるものだなぁと関心した。逆に言うと、それ以外の部分、例えは、音楽とか美術は特筆するものがなかったが、逆に言えば悪いところは無かったので、それだけ本筋に沿った作りになっていたというのも事実。「アビエイター」はそれぞれが主張し、印象が強かったために、作品全体の纏まりを悪くしたが今回は逆であった。
総じて、コメディ作品に「大逆転」という名作があるが、この作品はシリアス版大逆転とでも言えようか。ディカプリオがもう身分を偽っているのは限界だという辺り、同時にデイモンも、この際育ての父を裏切ってもというふたりの極度な感情の部分に、不届きにも筆者はこの作品を思い出してしまった。特筆すべき部分はなく、特別に評価は高くないが、良く出来た良い作品である。しいて言えば脚本が良かったのであろう。欲を言えば、スコセッシらしさが少なかったという別の言い方が出来るのかもしれない。
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by turtoone
| 2007-02-03 21:36
| 映画(た行)