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マリー・アントワネット

今年の期待度でこの作品を第2位にしたのは、明らかに「期待度」という言葉に相応しく、作品の良し悪しでなく「期待」が高いということである。おっと、そんな書き方をすると、この作品の出来が悪かったように聞こえてしまうが、それに関しては後述する。

何故、この作品に多くの期待を寄せたかというと、まずソフィア・コッポラ。こういう作品の監督をやれば、彼女の本当のところの実力が分ると思ったから。筆者は「ロスト・イン・トランスレーション」くらいしか知らないが、あの作品に関しては、筆者は然程高い評価は出来なかった。確かにオスカーで賞を取っているが、全体的に邦画的な流れを感じた作品であった。そういう意味ではカット割は結構面白かったと思うが、偉大なる監督である父親譲りというよりも、スタッフ構成などを見ても、親の七光りを強く感じてしまったせいもある。簡単に言えば、評価がしにくい作品であった。今回は筆者も鑑賞者として、又、一研究者としても多少評価を出来得る範疇だからしっかりみれると思う。それと、キルスティン・ダンスト。まずは。彼女をこの有名な王妃役に抜擢した感覚には脱帽する。キルスティンとマリー・アントワネットの共通項というのを探すのは大変難しい。しかし、この辺りにも、ソフィアのこのテーマに対する考え方が現れていて、要するに歴史上の人物を、現代女性の視点で捉えようという試みであることは良くわかる。この辺りから、可也、期待度が上がって来たのであろう。

しかしながら、正直なところ、全体を通して作品の安定感が無かったのが事実である。簡単に言えば、マリーを追っているのか、歴史を追っているのかが最後まで掴めなかったのが事実。世界史の一事実として、それは彼女がギロチン処刑されたことと、フランス市民に新しい国家観念が芽生えたという時代の偶然の重なりであり、現代のフランス国民には、彼女を庇護する声が多いことも事実。あの、プライドの高い国民がそう述べるのであるから、これはフランス史の悲劇としか言いようがない。だが、日本人には「ベルばら」のお陰で、ナポレオンよりも何をした人なのかの認知度としては、可也高いヨーロッパ史の人物である。だから随分誤解も沢山受けていて、この作品でも、当時のフランスの対外政策が、国家の威信を保つためと同時に国民生活を窮乏させていったことを述べている。だとすれば、14歳でフランスの皇太子妃となり、当時、ヨーロッパでも最も権勢を振るっていた王国の後継を委ねられた一少女を、もっと期待通りに少女の観点で描いて貰いたかったのは事実。ドレスと靴とケーキと美少年に憧れるのは、時代が変わっても同じなのかも知れないが、それは、今の時代の少女には普通のことかも知れないが、当時はごく限られた一部のことであるのだから、もっと「同盟のためにフランスへ嫁いだ少女の動揺」を描き続けて欲しいと思った。例えば、彼女は、国境の儀式には驚くものの、ヴェルサイユ宮殿を見てもそんなに驚かないが、本当にそうか? オーストリアの王家に生まれた彼女だからこそ、同じ皇族でも、これだけ格式が違うのかということは、他の誰かではなく、彼女だから分ることではないかと思う。冒頭に書いたような言い方をしたのは、この作品の評価は一般的にかなり低い様であったからで、でもそれは、筆者にとっては、物語の軸がマリーなのか、フランスなのか、その辺りが明確でないために全編にわたり焦点が呆けたせいであると思う。残念だ。

衣装など美術は素晴らしかった。この辺りには随分お金を使っていると思う。特に、ケーキや靴や帽子は、多少現代を意識して作られているのかも知れないし(というか、筆者の知る限りこういう資料を知らないので・・・)キルスティンの着ているドレス等はもう少し後世のデザインの様な気もしたが、その辺りは「忠実な史劇」を作ったわけではないから良いと思う。しかし、だとしたら前述もしたが、オーストリアからフランスへ行った辺りの「格差」を表現した方が良かった。事実、衣装等には現れているが、例えば、馬車1台をとっても、然程の違いは分らない。この序盤のシーンを彼女なりに脚色することで、この作品は随分鑑賞者を「掴め」たのだと思うのだが。音楽も中途半端だった。選曲でなく、使い方である。現代の音楽を前面に出すのなら、いっそのこと、オペラも現代曲でやったらどうか。確かにミュージカルではないが、そのくらいやらないと「ムーラン・ルージュ」の様に、鑑賞者に訴えられない。また、選曲がマニアックな部分もあり、それが余り映像的に面白いシーンでないと、誰の曲だったか聞き込んでしまう部分もあった。音楽に凝るのは良いが、ミュージカルでもミュージシャンの作品でもなく、あくまでもこの作品にとっては物語を飾る一部でしかない。「ロスト・イン~」でも感じたが、どうもこの監督は、音楽を懲りすぎる嫌いがある様だ。

全体を通して、マリー・アントワネットの作品でなく、良く、民放の世界を旅する番組にあるような、最近の若い女優が、一日マリー・アントワネットを体験した、そんなレポートみたいな作品になってしまったと思ったのは、筆者だけではないと思う。また、もうひとつ、やはり本物のヴェルサイユ宮殿にはフランス語しか似合わない・・・?


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by turtoone | 2007-02-02 23:52 | 映画(ま行) 

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