暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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敬愛なるベートーヴェン

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ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン。西洋音楽史上でも、他の音楽家とは一線を画した数々のエピソードと、後世の音楽家にも数々の影響と名演に繋がった、ある意味では最も数奇な運命を辿ったと思われるこの人物であるが、何故か同時代の音楽家に比べ映画作品化されたことは少ない。大体、「ベートーベン」というと犬の映画になってしまうではないか。モーツァルトがやれ没後200年だ、生誕250年だと世界中で大騒ぎされる一方で、では一般に親しみが無いのかというと全くそんなことはなく、「運命の扉を叩く」第五であったり、ナポレオンに捧げた「英雄」の楽譜を破ったり、年末になると世界中で素人オケまでが演奏する「第九」であったり、小学校1年からバイエルを弾いていた筆者ですら、初めて弾いた「有名な曲」は「エリーゼのために」であった。(余談ながら、この曲とモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」が世界でも最もポピュラーな曲だと思っている)。しかも、晩年は耳が不自由であったということも、音楽ファンのみならず、殆どの人が周知の事実であり、又、バッハが「音楽の父」、モーツァルトが「神童」と呼ばれるのと同じように、彼も称号として与えられた「楽聖」が、後々も彼の別称となるほど、映画化に関してはこれ以上話題の豊富な偉人も中々見当たらない。そんなこともあり、この作品化に関しては、2006年後半のひとつの目玉でもあった。

作品は、ベートーヴェンの「交響曲第9番 合唱つき」、所謂一般に「合唱」と呼ばれる当時としては、実験的演奏の成功エピソードが中心である。ヒロインでもある写譜師のアンナ・ホルツ(ダイアン・クルーガー)は架空の人物であるが、この時代に写譜師というのは数多く存在し、ベートーベンも何人か専属の写譜師を使っていたという。特に、晩年耳が不自由だった彼は、モーツァルトがやはりそうで゜あった様に、五線譜に書く前に頭の中で音階が出来上がっていたと言われるが、これは定かではない。ただ、子供の頃に読んだ彼の「偉人伝」には、耳が殆ど聞こえなくなったにも係わらずベートーベンは第九を指揮し、その素晴らしさに拍手喝采だった会場の様子も、彼には届かなかったと悲劇的に記してあったが、後に知った歴史の事実は、初演で指揮台に挙がったのは彼と、ウムラウフという指揮者。実際に楽団が頼りにしていたのはウムラウフの方であり、演奏後も指揮が出来なかった絶望感で会場を振り返れなかったベートーヴェンを観衆に向きなおさせたのは彼である。アンナ・ホルツのモデルはウムラウフだった。しかし、この場面の演奏に関しては、実際の演奏よりも短いシーンであるが見応えがあり、19世紀当時の演奏会場の雰囲気を垣間見ることができる。後述することに関係するのでひとつ説明すると、この「歓喜の歌」の構想は彼が交響曲第1番を作曲する前からあった。

但し、少し音楽を齧ったことのある身としては(又は、そうでなくて一映画ファンとしてもであるが)、この作品はここで終わって良かったのではないかと思うが、この後「大フーガ」完成のエピソードまで引っ張ってしまった。大フーガとは不思議な楽曲で正式には、ベートーヴェンが作曲した16曲の「弦奏四重奏曲」の第13番の終楽章として後に作成しなおされた。無論、13番の初演の時に、フーガは演奏されなかったし、この曲は年代も第15番と第16番の間に作られているのに、ナンバリングがなされていない不思議な曲である。最終的にこの曲の作曲秘話へと繋がるが、この辺りの構成はベートーヴェンファンだけにならイザ知らず、可也コアな内容と展開だったと思う。確かに、この大フーガは後世でも中々認められず、評価が高くなったのは20世紀に入ってからだ。つまりは、「第九」がそうであるように、大フーガも、ベートーヴェンの「実験的音楽」の中での大きな構想であったのだろうが、この作品では、それを重視したがために、ベートーヴェンファンには受け入れられたかも知れないが、結果的には作品のポイントをずらしてしまったと思う。

ベートーヴェンの曲の中では、交響曲第7番が最も好きな筆者にとっては、「第九」ならぬ「月9」の「のだめカンタービレ」の方が良いと思わせてしまうのも、結末を余計に引っ張ってしまったところに原因がある。しかし、それ以外の部分では、エド・ハリスのベートーヴェン(ちょっと清潔過ぎるが・・・)も中々良かったし、美術・音楽・時代考証などは素晴らしかったし、彼を映画として描くには、やはりこの「第九」のエピソードしかないことが良く分かった作品でもあった。


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by turtoone | 2006-12-11 00:45 | 映画(か行)