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暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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オリバー・ツイスト

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余りにも有名なチャールズ・ディケンス作品の映画化である。余りにも有名なというのは、一般的に読み物としてというよりも、エンタティメントの世界で余りにも・・・ということである。特にこの世界では過去に色々な形で何度も作品化され上映された。こういう表現をすることにやりやすい内容なのかと思いきや、実は、筆者が知る限りこの作品も、また、別のディケンスの作品も物語として表現し易いものだとは思わない。ただ、それはディケンスという作家とその作品の意図と裏に潜むものを発覚してしまうとそう思ってしまうだけで、実は、案外単純なストーリーじゃないって思えば、その通りであるともいえる。そして、今回の作品化は、そのどちらの部分をも満足させられる内容であった。

まずは、19世紀ロンドンの再現が見事である。街並みの特に建造物、道路、人々の衣装、それぞれの店舗といい、これだけで鑑賞の価値はある。この再現セットとその中で生きる人々達を見て、筆者は同時代の日本、つまり江戸の町に似ていると思った。喧嘩や、人の活気、行きかう掛け声など、この再現セットには近世の人たちの息吹が強く伝わって来る。別段、江戸末期に生きていた訳ではないが、その辺りの雰囲気は容易に伝わって来る。又、花火や花見が江戸人の楽しみだった様に、一方で絞首刑が市民の楽しみなんていうのは残酷で如何にもヨーロッパらしいが、人間の歩んできた道というのは内面的にいうと、世界中どこでも、余り変わらないということが良くわかる。アメリカなんかは「ボクシング」というスポーツに象徴される市民の楽しみが、やはりこの時代には流行しているのも人間の歩みの中で地域が異なっても、同時進行している部分である。例えば、中世という時代が世界中どこでも、残酷で残虐だった様に、この時代というのは、徐々に民衆の時代になっていったのが良く分かる。

一方で、作品を装飾する部分で救貧法の施行や、市民法廷などがしっかり風刺されているさまが笑えた。ディケンスという作家は冒頭で能書きを言えるほどそんなに色々読んだ訳ではないが、時代を嘲笑することに大変長けている作家である。この作品もこういう沢山の時代背景というサブテーマが語られていて、その辺りから察する当時の大英帝国の矛盾を仄めかしている独特の組立ては大変面白い。しかし、実は、そんなことはどうでも良く、要は少年オリバーの純心な振舞いだけを追いかけていても、十分ストーリーとして成り立ってしまうところが、何を隠そう、このロマン・ポランスキーという映画監督の「見せ方の妙」なのである。正直、単純なストーリーなのではなく、戯曲や脚本として成り立つディケンスのアクの強い部分は、この作品ではポランスキーの白いハンカチに包んで、ワン・ツー・スリーとマジックで変えてしまったというところであろうか。ポランスキー監督作品に関しては、「戦場のピアニスト」は今一つ、作品全体を通してテーマが絞り切れていないように映ったから余り評価は高くなく、筆者にとっては寧ろ「テス」。しかし、好き嫌いでなくどちらが彼の代表作かと言えば、今後筆者は間違いなくこの「オリバー・ツイスト」という作品をあげたい。「テス」はナスターシャが出ているので、所詮「好き嫌い」では比較にはならないのだが…。

ベン・キンスグレーは最初、ジェフリー・ラッシュかと思った。「ガンジー」といい、「シンドラーのリスト」といい、同一俳優が演じていると思えない。筆者的には淡々と鑑賞は進み、満足しながら何事もなかったように終わったが、小五の次女は何度も涙していた。この作品鑑賞も彼女の都合に併せたので公開から少し遅れたが、少年が主役の作品だけに、筆者には分からない感動の部分があることを知った。くどい様だが、ロンドンの街並みを観るには、当然のことながらシアターでの鑑賞をお薦めしたい。


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by turtoone | 2006-02-17 23:44 | 映画(あ行)