ハリーポッターと炎のゴブレット
2005年 11月 27日
実は、筆者はこの原作は読んでいない。というか、ハリポタも、前作から、映画の持つ視聴覚支配の影響から、原作を読んでも、イマジネーションが映画作品になってしまう。まだ、「秘密の部屋」くらいまでは、主要3人は別としても、ハグリッドや、スネイプ等は、自分の想像したキャラが勝っていたが、流石に、3作目にもなり、また、何度かDVDで見直していたりすると、もう幾ら原作でイメージを膨らませても、すべてが映画作品に出てくるキャラの顔になってしまう。昭和のテレビッ子世代は、これだから怖いのである。しかし、4作目は原作を読んでなくてこの鑑賞が、「炎のゴブレット」初体験で良かったと思った。「アズカバンの囚人」のレビューでも書いたが、この3作目で監督が変わったが、作品自体も大きく変わり、多少ダークな色合いが出た一方で、映画作品としてのクオリティぐっと向上した。そして、今作品では更に、スケール・アップしたと同時に、このシリーズ作品の方向性を位置づけることに成功した。この点は大変高く評価できるし、シリーズの最高傑作である。
幾つか例を上げると、まず、出演人物の内面をきっちり描写することが出来た。これはまずもって、新しい監督、マイク・ニューウェルの功績である。彼の直近の作品に「モナリザ・スマイル」があるが、同様に大勢の人物のひとりひとりの内面を表現することに成功した経験を今作品にも上手く活かした。終盤で、主要3人が「自分達も変わっていく」ということを仄めかす台詞があるが、そこに決着させる様に、特にこの3人の内面をものの見事に描写し表現した。そして、その結果が、3人の今まで以上の演技表現に繋がった点は監督の力であろう。又、そもそも、この作品は以前から脇がいつも締っていることで有名だが、前作で大活躍したゲイリー・オールドマンが殆ど姿を見せない中、今作品では、ブレンダン・グリーソンが本当に素晴らしく、職人芸としての演技を全編で熱演した。ここのところ、「ギャング・オブ・ニューヨーク」、「コールド・マウンテン」、「ヴィレッジ」、「トロイ」、「キングダム・オブ・ヘヴン」と話題作に軒並み出演し、しかもすべての作品で印象に残る演技を披露してくれていたが、本作品は演技的にも彼の代表作になると言っても過言では無い。又、今作品では必要以上にダンブルドア校長を意識的に観客に印象づける場面が随所にみられたが、これは、前作で、リチャード・ハリスの逝去に伴い、マイケル・ガンボンに変わったものの、まだ、以前のダンブルドア校長のイメージが一般に残っているところを払拭するものと思われる。そして、それは見事に成功したと言えよう。ハリポタは子供の観客も大変多く、第1作から観ている子供たちには前作の校長先生は多少違和感があったと思うが、今回は、もしかしたら賭けに出たのかも知れないが、これは成功だったと言える。子供という鑑賞者を馬鹿にしてはいけない。大人よりずっと純粋で、小手先だけでは感動を与えられないのが子供たちの感性である。前作のキュアロン監督は、寧ろそんな事はあまり気にしない芸術家タイプであるが、人間描写のニューウェルは、その辺りまで拘ってくれたのである。
但し、この作品は、完全にこのシリーズを、半分子供向けから、完全に大人向けにしてしまった。勿論ファンタジーであるのだからどんな世代にでも楽しめるが、その方向性の転換と自作(一応最終章?)への展開に向けて作品の骨格全貌を明確に示した点では、何度も申し上げるが、映画作品としてはシリーズ最高傑作であった。
それにしても、ウォルデモートをレイフ・ファインズが演じていることを鑑賞後プログラムで知った。ということは次回作では顔が戻っていることを期待したいのだが・・・。原作を読んでおこうかなぁ。
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by turtoone
| 2005-11-27 22:20
| 映画(は行)