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暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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パッチギ! ~My Collection~

パッチギ! ~My Collection~_b0046687_12565851.jpgこの作品にあるシチュエーションは、東京ではあるが筆者の高校時代の経験からも多少fは理解できる内容である。但し、1968年の京都という舞台設定とは可也かけ離れたものである。「イムジン河」という名曲が放送禁止になっていた(というか、当時この河が37度線を示すということも)とか、朝鮮半島に関する考え方も現代の北朝鮮問題と比較すると然程過剰な関心も無かったと思う。ノンポリだったのかなと不振り返る。筆者が通っていた学校に一番近いターミナル駅付近の一区画は、彼らのエリアであり、迷い込んだ学友がカツアゲされて帰って来ることが多かったが、日本の不良高校生には殴る蹴ると暴力を奮った警察も、そのエリア内の事件には不介入であった。その点、やはり、関西は作品で見る限りフランクだ。日本人女子高生が朝鮮人を殴ったり、恋もあり、異国の兄弟分もありと、映画だからかも知れないが、日頃の関係がはっきりしているところが違う。だから筆者の体験とは全く異次元の世界の出来事として鑑賞するとこの映画の本質が良く理解できるのである。

過去の井筒作品よりも強く感じたのは台詞の面白さだった。いつもながら日本の映画はMCが悪く(撮影隊の腕が悪い訳ではないから、収録の際の拘りか、ボリューム設定が甘い)そこがシアターで観ているのと違い、台詞を落としたときの違和感(最悪は再生しなおすという)が大きいが、例えば当時の高校生が「明日、戦争に行けと言われたらどうする」と聞かれて「学校があるから」と、筆者を含めて60年代以降生まれの軟弱な精神の持ち主とは違い、戦争に行く行かないの論点が自分の身近に置き換えられるという辺りの台詞回しは面白い。確かにこの時代にはまだ「鬼畜米英」とまでは行かなくても、「対外」という感覚の第一にアメリカがあり、国内の左翼活動や全共闘も対米であり、彼らのイデオロギーがイコール、若い人間の活動源であり世相を引っ張ったと国中が勘違いしていた嫌いがある。その環境下であれば、朝鮮半島の人たちには「同胞」とはいえないが、同じ戦争の被害者(同じという言い方は御幣があるかな?日本は戦争を起こした国であるから・・・)という共通観念があったということも考えられる。

さて、作品に関してであるが全般的にはプラスとマイナスの両面があった。まずは美術。いつも言うように外国作品とは予算が違うから過去の風景を作るのは難しいがかなりロケハンには力が入っていた。一方でバスの表示だったり、信号機だったり、川土手の風景、細かいところは電気のスイッチなど、1968年よりも後の時代の物があったのは残念。重箱の隅をつつく積りはないが、多分編集時には気がついていた場面なので、カットしても良かったシーンもあった。もうひとつは役者である。ご存知の様にこの朝鮮人役も日本の俳優さんがやっている。しかしながら残念だったのは、若い高校生役の面々は朝鮮人になりきっていたのに、ベテラン陣の方が大変物足りないというか、全く役つくりに工夫がなかった。(工夫したとしたら全く足りなかった)。これは本当に残念だ。役者という文化・芸術の場に長いこと身を置いている人間の方が、きちんと異国の文化を学ぼうとしないあの年代に多い、大陸・半島への偏見が諸に出てしまったということである。その点、高岡蒼佑、沢尻エリカ、波岡一喜などは、普段の小さな仕草から朝鮮の文化に精通した所作を研究していた。この点は脱帽。適応性というだけでなく、「ワールド・カップ」の効果もあるのか、若い世代の人間の方が対アジアの偏見が無いのだと思う。こういう部分は筆者の世代からみれば学ぶ点が多い。

基本的にバイオレンスのシーンは嫌いである。但し、井筒は実にこの点の表現は上手い。殴り合っていても妙に裏に信頼感があるという部分が伝わってくるのは、作品の延長上や脚本の過程上にあるバイオレンスでなく、そこから何を井筒自身が監督として得たいかが明確に示されているからである。「こういう映画を作りたかったんや、ええやろ」と鑑賞者に問いかける、大変正直な監督なのである。

残念だったのは、川を渡るシーンにクライマックスを持って来れなかったのが失敗。ここでエモーショナルが切れてしまったのも事実。低予算で努力賞というところか?


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by turtoone | 2005-09-03 13:00 | 映画(は行)