暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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愛についてのキンゼイ・レポート

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現在は某国立大学理工学部の教授として教鞭をとっている友人が、20年程前にまだ学生として研究の日々を送っていた頃、「学者として大成するためには恩師の学説を否定するところから始まる、因果な身分なのです」と言っていた。又、学生時代にアメリカで知り合った電子工学を学生に教えている教授のヘルパーはWASPで、最先端の科学を研究していながらも敬虔なクリスチャンである彼は、人類は創造主が土から作りたもうという旧約聖書の創世記を本当に信じて疑っていなかった。この作品を観ながら、何れもかなり昔の体験であるが二つのことを思い出してしまったのは、研究者というのは研究内容と研究者自身との整合性を日常で、一体何処に見出していくのだろうかという疑問であった。何れの例も、この作品に関しても、筆者は(勿論そんな優秀な頭脳は持ち合わせていないが・・・)研究者でなくて良かったと思う。筆者なら前述の疑問から派生するジレンマとフラストレーションで、肉体も脳も正常に機能しないと思う。

敢えて、どうして今、この映画を製作したのか。まずこのコンセプトとその実現には個人的に高い評価と絶賛を表したい。現在アメリカ世相への批判でもあり、同時に一方で自由の大陸が表向きでありながら、いつ基督教右派が言論や活動を統制するか分からない不安定な政府と愛国心を失った世相への警鐘であると言える。つまり、この作品は筆者に取っては鑑賞前から「勝ち組」なのである。筆者においては「パッション」も2004年の最高傑作として選出されたが、これも状況は同じで、結果的にあれだけ残虐な内容でも、鑑賞前にその作品製作の意志に対して高い評価と敬意を表していたので好意的な鑑賞が出来たことが大きかった。

日本では作品タイトルに「愛」という文字が入ったが、最初この「愛についての」という表現はどうにかならなかったのかと思ってこのブログにも書いてしまったが、これは筆者の間違い。作品を観てお詫びと訂正をさせて頂く。そう、原題が"KINSEY"だけだったということと、余りにも有名なアルフレッド・キンゼイ教授のレポートの発表過程と、その反響や痛烈な批判や裁定を中心に1950年代のアメリカを描いた作品だと勝手に勘違いしてしまった故、以前にそんな暴言を吐いてしまったのだが、「とんでもない!!」 これは、本当に「愛」の物語である。しかも、キンゼイ博士もさることながら、ローラ・リニー演ずるクララ・マクミレンは素晴らしい「愛と愛の研究者」の理解者である。彼女の言動やある意味で突飛な行動もすべて「愛」と「愛の研究者である夫」をより深く理解するためというのがその動機である。この夫婦の愛の表現は、見方を変えると「きみに読む物語」と同じである。愛というものは言葉や何か他のもので表現できることでは無いという「崇高」な部分が作品の土台になっている。勿論、その土台は作品だけでなく、キンゼイ博士の土台でもある。だからこそ彼は、「性調査」という当時ではまだタブーだった領域に踏み込めたのであり、同時にそれは「父親の愛」の取り違いにも通じる。もし、博士が少年時代に父の態度を暴挙だと思わず崇高な愛だと捉えたら、この研究もこのレポートも存在しなかった訳だから、結果、現在でもまだ、アメリカは性に対して閉鎖的な環境であったに違い無い。すべては「愛」の探求と、「愛」の発見に終始するのである。そして、最後にその大いなる「愛」を表現したラストは大変感動的であった。そう、キンゼイ博士は物語の最後で、自身の「研究者としての最初」に戻るのである。良いラストである。

そして特筆すべきはリーアム・ニーソンである。特に今年は「バットマン・ビギンズ」「キングダム・オブ・ヘヴン」と大活躍。筆者は惜しくもオスカー主演男優賞を逃した「シンドラーのリスト」の演技が一番好きであるが、「ロブ・ロイ」、「マイケル・コリンズ」等実在の人物を演じることがとても多い俳優だ。しかしながら、本作もそうであるように、常に演じる人間像と自己との共通性を明確に見出した故の役作りというのは見事である。新しい役をやる度に新鮮かつ鮮烈なイメージを鑑賞者に与えてくれる俳優である。

本当に良い作品だった。ただ、採点には影響しないがエンドロールの動物たちの映像のセンスは頂けなかった。この作品で唯一残念な点である。


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by turtoone | 2005-08-27 18:06 | 映画(あ行)