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暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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ラスト サムライ ~My Collection~

ラスト サムライ ~My Collection~_b0046687_21264165.jpgトム・クルーズの主演、渡辺謙・真田広之というトップスターが共演し、日本史と日本文化を始めて忠実に再現したということで話題になったハリウッド作品であるが、正直なところ前評判が高すぎただけに、筆者的には大コケした作品であった。しかしながら、この作品から自身が映画を鑑賞する上で学んだことは意外に沢山あった。そして、上記の理由で日本では興行収入が135億円と、外国映画ではタイタニック、ハリー・ポッターの2作に続いて歴代第4位、DVDセールスも105万枚と歴代第5位という好成績を残している。公開時、劇場でも筆者の周辺はシルバー層ばかりだった覚えがあるし、日本人に人気の高いトム・クルーズと馴染みのある日本人俳優効果が絶大だったのであろう。

筆者的に「許せない」部分はやはり歴史的事実との「調整」である。例えば、「勝元」という人物とその一族について。「大村」という人物との相関から、勝元は西郷隆盛、大村は大久保利通をモデルにしていることが窺われるが何れも人物を脚色し過ぎて、かなり極端な存在になってしまった。又、「吉野」という場所で政府軍との合戦が行われて、その後一行は富士山を経由して自分たちの集落へ返るが、当時、都は「東京」だった訳だから、吉野が奈良県で良いとすれば、一体彼等は何処をどのように通って合戦をし、何処に集落を持っているのだろうか?今でも不思議だ。一番笑えたのは、「勝元たちが列車を襲いました」という台詞は「大列車強盗」を観ているのかと笑った。彼等が身につけている鎧・兜も、関が原の合戦時のものと変わらない。また、明治維新に忍者が出てくるが、これは日本モノの「お約束」にしか過ぎない。さらに、全編に流れる音楽に関していえば、合いの手の掛け声などはカンフーっぽく、ディズニーアニメの「ムーラン」の曲に相応しいと思える。このあたりの例を挙げると限がない。

先日アップした「グラディエーター」では、作品と史実との違いに、製作者側の歴史的願望における操作という点を大変強く感じたが、この作品には如何せんそういうものを全く感じない。逆に言えば、これだけ日本人スタッフや関係者を抱えていながら、この程度のある意味で「鑑賞者を馬鹿にした」物しか作れなかったことには大きな憤りを感じる。日本人が係わったものでは、1980年に「将軍 SHOGUN」という作品があったが、あれよりはマシだとしても、まだまだ日本は、中国や韓国と同じ土壌で語られているに過ぎない。残念ながら、これが事実なのである。

もうひとつは、トム・クルーズ演じる南北戦争の英雄、オールグレン元大尉は、やたらとインディアンを襲撃した過去の記憶をフラッシュバックさせている。これも意味は良く分からない。彼がインディアンの生活同様に日本人の生活風習を小まめに日記に記している共通性から、過去の忌まわしい自己の戦歴への確執と自責の念を描写していることは分かるが、だからといって、最終的に彼が勝元とともに戦ってしまうという部分の論理構成は希薄で、正直、バグリー大佐への個人的な恨み以外に動機が不明である。ならば、一層のこと、もっと小雪演じる健気な「たか」の行動に対して恋愛感情が芽生えたという理由の方が単純で納得が出来るものだった。

公開当時からこのタイトルの「サムライ」は誰のことかという議論があったが、ラストをみれば分かるように当然、唯一生き残った「彼」の精神のことであるのは明瞭で、だとしたら、そのサムライの精神的な構築に関しての説明不足は歪めないのがやはり残念で仕方ない。

一方で、ロケハン等、評価すべき点も幾つかある。特に、勝元の居所になった「寺院」は、日本人観光客に然程知られている場所で無い。こういう「ハリウッド式嗅覚」は、邦画がなんでも京都太秦で撮影するのではなく、盗んで、磨いて欲しい素晴らしい手本ではないだろうか?

色々文句が多かったが、何事も一度に大きな飛躍は望めない。千里の道も一歩からということでは歴史的な第一歩である作品なのかも知れない。


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by turtoone | 2005-07-30 00:09 | 映画(ら行)