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暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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ジャンヌ・ダルク ~My Collection~

ジャンヌ・ダルク ~My Collection~_b0046687_21582811.jpgリュック・ベッソン監督の最高傑作である。ジャンヌ・ダルクのことは「知っている様でよく知らない」歴史上の偉人である。世界史と聞くとアレルギーになる方が多いと思うが(かくいう筆者も歴史は得意だが、世界史より日本史に限る)この時代背景は確かに複雑だ。日本という島国はこの境界の中で2000年以上も略単一の民族が繰り返してきたものである。それゆえ、基本的に大きな変化があったとしても、稲作の普及と、封建制への転換、それに黒船から文明開化時代の3つくらいである。だからそんなに複雑ではない。しかし、世界史、ことヨーロッパの歴史というのは、現代の国家の枠組みで考えられるほど単純でない。特に、我々の日常生活にも全く馴染みの無い「基督教」という考え方で括ると、欧州人には分かりやすいが、日本人にはチンプンカンプンである。しかし、この視点を持たない限り、より深く欧州の歴史を理解することは出来ないのである。ジャンヌ・ダルクの時代背景も同じで、当時、英仏は百年戦争(1338~1453年)中であった。そして、事実上この百年戦争を終結させたのも「オルレアンの少女」と呼ばれる彼女であるし、又、火あぶりの刑という劇的な最後を遂げることで、よりフランス史とヨーロッパ史の中にきら星の如く輝く存在となったのも事実である。

そんなジャンヌ・ダルクという人物をどう描写するのかは、この作品の公開以前から、大変興味があったのを覚えているが、正直、公開時には内容の難易度とストーリーのペースが一致せず、殆ど理解できずに終わったように覚えている。当時、映画館の帰路、ジャンヌ・ダルクについて書かれた文献を地元の図書館で全部借りた覚えがある。それでも理解できなかった部分は、やはり「基督教」の考え方であった。筆者は幼稚園からずっとミッション・スクール育ちなのに、それでも(その中途半端さが仇なのかもしれないが・・・)理解できないということは、この作品に関しては生涯理解できないのかも知れないと思った。

しかし、最近になって何度もDVDを見ることで、逆にこの作品を「現代風」に捉えると、所謂、ジャンヌ・ダルクに対しての「神の啓示」とは一体なんだったかという部分を基督教は関係なく自然にストーリーとして受け入れられるところが、実は、このベッソン・ワールドの素晴らしさなんだと理解できる。ベッソンが特にその部分を強調したキャストが、ダスティン・ホフマンが演じた「ジャンヌの良心」という役である。事実、彼女は自らで洗礼(実際には献身礼では無い)を授けて、自らで受けるという奇怪な形で信徒となり、更には時と場所を選ばず告解も行う姿は、まともな信徒であるといえない。しかし、それを異端児として裁いたという当時の歴史的解釈を、最終的には自らを偽り、欺き、良心に従って自らを裁いたという結論に導いた。これは、歴史解釈としては妥当であり、同時に現代的に言えば、的を得た結論でもある。結果的には、ジャンヌを百年戦争の英雄として位置づけているし(彼女がいなかったら、現代にフランスという国家はなかった)、当時の教会の腐敗に関しても、否定説を提示していることになる。つまりは、すべてがこの作品は歴史劇を描いたのでなく、歴史をモチーフとした現代風刺作品なのである。そして、そのことに大変価値のある作品である。

正直なところ、もう少し、音楽とか撮影効果に拘って欲しかった。美術や衣装考証がとても良かったので、逆に浮いてしまった感がある。又、ミラ・ジョボビッチも、最初に見たときは何者かと思ったが、何度も作品を見直すと、大女優のフェイ・ダナウェイ、超個性派のジョン・マルコビッチ、更には前述のホフマンを向こうに回して、大胆不敵な演技をしているといえる。しかしながら、監督ベッソンとの関係で考えると、二人の結婚生活は「フィフス・エレメント」ではじまり、「ジャンヌ・ダルク」で終わってしまったとことになり、大作2本を生み出しての終止符は傍からみるとなんだか悲しい。この作品後はミラ・ジョボは「アリス」になってしまい、ベッソン作品も決定打に欠けている。このふたりの共演は、映画界に新風を引き起こせると信じて疑わないのだが・・・。


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by turtoone | 2005-07-19 23:07 | 映画(さ行)