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暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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五線譜のラブレター ~新作DVD~

五線譜のラブレター ~新作DVD~_b0046687_13545964.jpg昨年末の忙しない時期に劇場公開された作品であったために、見落としてしまったが、DVDで鑑賞して今、本当に後悔をしている。しかしながら、近々、名画座・早稲田松竹「ビヨンドtheシー」との2本立ての上映があるので、これは見逃せ無い。

兎に角この作品は一言では語りつくせない要素と映画の枠を超えた実験的な試み等、類い稀な作品である。まず、ジャンルが多岐に渡っている。コール・ポーターという1920年代から音楽シーンで活躍したアメリカを代表するミュージシャンの伝記である。しかし、単に伝記映画という訳ではなく、やはり音楽家なので当然、音楽のシーンは必須である。だが、例えば、前出の「ビヨンドtheシー」とも、「Ray/レイ」とも、はたまた「アマデウス」とも違う。なぜかというとこの作品はミュージカル作品でもあるからだ。過去の音楽家の伝記はミュージカルの要素を取り入れたものではない。そのミュージカルの部分でも、様々な実験をしている。更に、崇高なラブ・ストーリーでもある。しかし、これもラブ・ストーリーの枠には到底収まらない人間の存在意義を世間に問うという哲学的なテーマが介在している。要するに、色々な部分を採ってみても、特定の枠内に収まるものではないという作品である。

この辺りのことをズラズラ書いていると、この記事も収まりきらなくなってしまうので、まずは音楽の部分を紹介すると、この作品に出ているミュージシャンのすべてが素晴らしい。ナタリー・コール、ロビー・ウイリアムス、エルビス・コステロ、アラニス・モリセット、シェリル・クロウ、キャロライン・オコナーそれに、ダイアナ・クラール。名だたる音楽フェスでもこれだけのアーティストを集めるのは難しい筈なのに、この作品では、これらのミュージシャンを更に脚色し、彼等の持つそれぞれのオリジナリティーに加え、コール・ポーターの要素と、プラスこの作風に即したアレンジをどのアーティストのシーンでも見事に完成させた。そういう意味では映像的大実験の成果である。本当にすべてのアーティストのシーンが見事だが、筆者として、やはり全く新しい側面を見せたアラニス、そして何をやってもエンタメ的には確立しているコステロのテイクは芸術という表現に相応しい物である。

この作品そもそもは、アシュレイ・ジャドが出るくらいしか筆者の認識はなかった。それに主役がケビン・クラインだから、演技巧者たちの玄人好みの作品になるのだろうと、そんな程度の認識だったので、昨年末も見逃したのである。勿論、この二人はまさに演技巧者であるが、まずアシュレイはこの時代にピッタリ。というか、この作品をモノクロで観ていたら、本当に1930年代の作品だと勘違いするであろう。アシュレイには往年の名女優の風貌がある。もう、彼女は今後もこの路線だけで行ったらどうかと思う。1930~1940年代に撮影された素晴らしい映画がたくさんあるが、その名画リメイクを今のアシュレイなれば演じきれて、しかもオリジナルより素晴らしい映像がスクリーンに映しだされるのではないか。彼女を見ていると、そんな際限ない期待が止まらなくなってしまう。ケビン・クラインも、この作品は彼の最高傑作である。確かに、メイクで年老いた役もやっているが、その演じ分けもさることながら、作品中で歳を取るごとに変わる彼の表情が、人間というものは、長く生きることによって沢山の物を背負うのだということを本当に良く表している。

脚本も演出も、勿論美術も素晴らしい。特に、冒頭の設定は見事だ。年老いたコールが自らの人生を劇場で振り返るという設定は、どこにでもありそうであるが、この作品に関して言えばベストな選択であった。この手法を取ることによって、フラッシュ・バックの多用が不要になった。更に、「ガブリエル」というストーリー・テーラーを置くことによって、自伝でありながらそれを客観視してみれるという不必要な感情移入をなくした。さらに、シアター・モードにすることによって、より、ミュージカルの要素が高まったのである。そういう意味では一本の作品を色々な見方ができる作品であると同時に、以前、「キング・アーサー」の記事で書いたかも知れないが、これもある意味で原作と音楽の現代的なコラボレーションなのではないか。そういう意味では実験的作品であり、こんな新しい作品をもっと作って欲しいと願うのである。

取り合えず、7月の名画座2本立ては押さえたい。劇場で観れば、又違うものも分かってくるので・・・。しかし、その前にDVDを観倒して台詞まで覚えてしまうかもしれない。それほど、最近では衝撃的な作品だ。


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by turtoone | 2005-06-14 14:44 | 映画(か行)