暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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ミリオンダラー・ベイビー

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「ミリオンダラー・ベイビー」が漸く公開され、今年のオスカー総決算という形での鑑賞になった。当初より、単なるボクシング映画では無いという評判(では、「単にボクシング映画」って例えばどういう映画?「ロッキー」にしても、「レイジング・ブル」も「チャンプ」も、どれを観ても「単なるボクシング映画」だとは思わないが・・・)で、しかも、今年のオスカー主要部門を独占した作品に、色々な期待をもって望んだ鑑賞であった。

結論を言うと、この映画は「単なるボクシング映画」ではなく、「ボクシング映画ではない」ということである。この作品には、今人間社会が日常の中で忘れつつある大切な物の殆どが語られている。テーマは「生命の尊厳」である。それはラストに掛かる部分を見るまでも無く、最初から常に語られている。主人公のフランキー(イースト・ウッド)は、一見気難しい年寄りに見えるが、ボクシングの世界に関わってきた自己の人生の中で、何人ものボクサーを見て、育て、そして彼等の人生を背負って来た。そして、テーマである「人間の尊厳」からすると、このスポーツはその定義から地球上に存在するものの中で一番遠くにあることを熟知している。名声もあるが代償も大きい。栄誉もあるが、誰にでも与えられるものではない。過酷なスポーツの名を借りているが殴りあいであることは間違いない。それらをすべて知っている人間だ。つまり、人間の尊厳をより強く表現するために題材とされたのがボクシングという領域だったに過ぎない。

次に、人間社会は清濁が常に混在していて、正しいか悪かということの判断を観客に問うやりとりが多く出てくる。そしてそこには敢えて映像での結論は出していない。それは現実社会で我々が考えることであるのだが、現代はそういう思慮についてとても浅薄になってきているのではないかという問題提起をしている。人間とは日々考え、日々成長していくものである。そしてそれにはベースになる部分が重要である。そう、アメリカが大好きな「人間は何時でも変わることができる」という考えを踏襲しつつ、でもそれは、何時でもあることではなくて、チャンスが来た時に見逃してしまわないように、準備をしておくことが大切だということ「ボクシング」をひとつの喩として扱い、強調している。

そしてもうひとつは「家族愛」について警鐘を促し、「人間愛」の探求を試みている。「愛」というのは普遍なものであるから、「○○愛」という特定なものでは無いということを自分の娘への愛と、マギー(ヒラリー)の家族、さらにはフランキーがマギーに対する愛を描くことによって「崇高な愛」を模索している。教会のミサにも欠かさず訪れる。極めつけは前述した清濁の部分にも連なる、ラストシーンで、この「愛」と「清濁」が混在するという問題提起を鑑賞者に残して映画は終わってしまう。ここから先は我々ひとりひとりの問題ということなのだろうか。

こうしてレビューを書いていると、この作品が地味ながらも、歪んだ人間社会への警鐘を鳴らしていることから、オスカーの作品賞に相応しかったのだということは大変理解できた。

しかしながら、一方で過去の作品に比べてどうかというと問題提起が大きかった割には優等生的な映像で終わってしまった。又、結論は出さなかった。この辺りは、例えば「アメリカン・ビューティー」や「レインマン」が、問題提起をしつつ、しっかり作品内で結論を導き、その結論が実社会への問題提起になったのとは違い残念だった。そしてそれを弁明する、スクラップ(モーガン)の台詞も虚しく映るだけだったのが最後の最後で惜しかった。

これで、大体オスカーの主要部門に関する作品は観終わった。(アネット・ベニングの作品がまだ来ていないが・・・)この時点で、候補対象に対して筆者の独断で今更なガら勝手に選考すると、主演女優と、助演男女優はそのままで良いが、やはり主演男優は「強迫神経症」の演技だけをとってもディカプリオだったし、作品賞は、結論を言わなかったこの作品より「ネバーランド」が上だった。但し、「アビエイター」で書いた通り、映画は「パーツ」だけが良くても仕方ない。そういう意味では、ヒラリー・スワンクの「選作眼」が見事。勿論、演技力云々でなく、この役柄を選んだ意思である。そしてそれは、たった一度かも知れないチャンスに掛けるために日々の努力を怠らない、世界中のボクサーに共通し、又、代表している。


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by turtoone | 2005-06-02 10:24 | 映画(ま行)