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暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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カッコーの巣の上で ~My Collection~

カッコーの巣の上で ~My Collection~_b0046687_177864.jpg一般的にオスカー五冠と言われるのが、「作品賞」、「監督賞」、「主演男優賞」、「主演女優賞」、「脚本賞」である。過去76回の中でこの五冠に輝いたのは、7回(1934)の「或る夜の出来事」、64回(1991)の「羊たちの沈黙」と、この48回(1975)の「カッコーの巣の上で」の3作品しかない。その中でも、あくまでも「オスカー作品」として考えてもっとも相応しい(所謂、ベスト・オブ・オスカー?)のが、この作品であろう。

まずは題材がオスカー好みである。作品賞として選出されるかどうかは別として、オスカーで好まれるのは、「精神異常者」、「アルコール中毒」、「受刑者」、「歴史上の人物」色々あるがその筆頭である。しかも、この作品は舞台が、オレゴン州立精神病院であることが最初から相当ポイントが高かった。また、この年は対抗する相手にも恵まれた。最大のライバルは「狼たちの午後」であった。しかし、よくよく考えると、この作品をきっかけに、主演のジャック・ニコルソンは、オスカーの常連になっていくのに比べ、一方の「狼たちの午後」で受賞を逃した主演のアル・パチーノは、暫く、オスカーから嫌われた。どう考えても俳優の人と成りの「誠実さ」とか、演技の「手法」等から考えても、アル・パチーノの方が正統派であり、コンサバなオスカー好みだと思うのに、ジャックがコレだけ評価されている基点というのが、この1975年のオスカーでの受賞の如何だったのではないかと、邪推してみたりする。

この作品は、ストーリーもさることながら、出演している役者のそれぞれの演技が素晴らしい。まず、ジャックを凌ぐ演技力をみせたのが、この作品が殆どデビュー作に近い、ブラッド・ドゥーリフである。オスカーには助演男優賞でノミネートされていたが、残念ながら受賞を逃した。ジャックが取れなくても、彼は最有力と思われていたのに、オスカー審査員は、多分、彼の「若さ」を危惧したのではないかと思う。彼はこの作品で英国アカデミー賞とGG賞の新人賞の栄誉に輝いたのだが、やはり、オスカーとこれらの賞の違いは相当あるらしく、その後、出演作品は多いものの中々良い役に恵まれなかった。しかし、彼の存在が(少なくとも筆者には・・・)再びクローズアップされることとなったのが、「ロード・オブ・ザ・リング2 二つの塔」のグリマ役である。この役は久しぶりに彼の存在感を大きく示した役柄であった。とにかく、何度見ても、この作品の青年役は素晴らしく、決して大げさでなく、中々このような神懸り的な演技においそれとお目にかかれるものではないということを特筆したい。

また、彼だけでなく、この作品に出ている役柄は、この年のオスカー助演男優賞のノミネート枠5つを、全て埋め尽くしても良いくらいの演技力大合戦である。そして、この作品が「不思議」なのは、観客は皆、この「精神異常者」たちの誰かに感情移入しているということ。そこで生きてくるのが、この病棟の婦長役を憎々しく演じ上げて、見事主演女優賞に輝いた、ルイーズ・フレッチャーである。それを最も理解していたのが本人であり、オスカーの授賞式では、「受賞できたのはみなさんが私のことを憎んでくださったからです。憎まれるって大好き」とスピーチ。さらに彼女は、「両親に感謝します」というスピーチをテレビに向かって手話を交えて行った。彼女の両親は聾唖者であり、彼女の行動は会場を感動と喝采の渦に巻いた。しかしながら、彼女のこれらの行動はすべて、オスカーでよくありがちの「役者の固定観念」に結びついてしまった。事実、ルイーズは、この作品が映画出演3作目。それで「カッコーの婦長役の~」というレッテルをはがすのは難しく、ブラッド・ドゥーリフ同様、その後中々陽の目をみていない。

もうひとり、クリストファー・ロイドもこの作品の「精神異常者役」がきっかけで、その後のこの人の映画界での活躍に関しては、御存知り通りである。それ以外にも、マイケル・ベリーマン、ウィル・サンプル、ダニー・デヴィートと何れもが前述した様に助演男優賞にノミネートされても決して不思議ではない程、この人たちの演技は圧巻である。

監督はミロス・フォアマン。「アマデウス」で2度めのオスカーを受賞している。どちらの作品が好きかと言われるとかなり悩む。できれば返答したくない。「ヘアー」というこれまた素晴らしいミュージカルも手がけている。そして、何れの作品も登場人物のひとりひとりを丁寧に描いている。この作品でも、彼の「丁寧に描く」というコンセプトが役者のひとりひとりの名演技生んだのであろう。彼は、両親をアウシュヴィッツで亡くしているという過去がある。しかし、彼は決して、その方面での作品や、巨匠が陥りがちなユダヤ民族を描いたりということをまだしていない。その過去と関係あるか分からないが、登場人物のひとりひとりを大切にするという観念はどの作品をみても変わりない。監督作品は少ない方であるが、それが納得できる監督でもある。

ベスト・オブ・オスカーと前述したが、だからといってこれが「映画のお手本」では無い。しかし、30年を経た現代でも、決して題材が古さを全く感じさせないところが、この作品で役者ひとりひとりが表現している、人間としてのメッセージなのである。


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by turtoone | 2005-02-27 18:34 | 映画(か行)