フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白 ~新作DVD~
2005年 02月 26日
大統領など権力の中枢にあった人は、在任を終えると「回顧録」を書いている。アメリカの大統領も歴代、皆執筆をしているが、最近余り面白いと思った物はない。クリントン前大統領の回顧録は昨年6月に発売され、アメリカでは大変な人気、ウェブでも盛り上がっている様だが、残念ながら筆者は、日本語訳版が発売になったのか否かも良く知らない。事実、以前面白かったのは、「アイゼンハワー回顧録」、「カーター回顧録」等、やはりアメリカが激動の時代にあった大統領の執筆物である。そういう意味では、アメリカ大統領ではないが、イギリスの女性首相「サッチャー回顧録」は大変面白かった。第二次世界大戦後に書かれた、世界の政治家の書物の中では最も読み応えがあった物だったと記憶している。
この「フォッグ・オブ・ウォー」という作品を見ていて思ったのは、これからの政治家の回顧録は、この作品の様に映像化していくのもありではないかということだ。確かに権力の象徴だった人たちの記憶の映像化には、様々な障害が付きまとうのかも知れないが、このドキュメント作品の主役である、ロバート・マクナマラの生涯を映像で追った「回顧」は、大変価値のある歴史的証言であり、同時に、新たな「映像作品の可能性」を大いに引き出した作品である。決して技術的に新しいことは何もないが、高い企画力をもって新しい世界を開いたという意味では絶賛したい。
脚本も良い。「マクナマラからの10の教訓」という主題をしっかり持っていて、観客にそれを提示することにより、90分のドキュメントという、人によっては退屈を呼ぶ処をしっかり押さえてある。単なるドキュメントだけでなく、これを映画として扱おうとした趣旨もはっきりしている。これだけの内容の質と量は、もしテレビをメディアとして使ったら、欲張りなあの世界は、10回シリーズか何かでトータル的には散漫なもので終わってしまったであろう。映画をその発表媒体として使った発想が結果的に正解であった。
更に、単なる「歴史的証言」では無く、彼自身の21世紀への願いや祈りがこもっているところがいかにも映画作品らしい作りである。思えば、(それ以前にもあったが・・・)マイケル・ムーアの「ボウリング・フォー・コロンバイン」以来、それまでは映画というチャネルでは難しいとされていたドキュメンタリーという分野の作品がたくさん出てきているが、どれも、日本で公開されているものはアメリカでの興行成績が良いものばかりなので、今のところは、テレビとは違った論点を持ち、さらに凝縮されながらも、作品の中に起伏を持たせていて、どれも興味深いものに仕上がっている。ひとつ、残念だったのは、「10の教訓」を優先したために時代が前後してしまったことが、彼の生きた時代を長尺とした歴史事実を理解していない人間には、少し分かりづらかったのではないかと考えた。
第二次世界大戦後に、どのようにアメリカが世界一になって来たかを理解するには、大変分かり易い参考書である。この時代に興味のある方はご覧あれ。
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この「フォッグ・オブ・ウォー」という作品を見ていて思ったのは、これからの政治家の回顧録は、この作品の様に映像化していくのもありではないかということだ。確かに権力の象徴だった人たちの記憶の映像化には、様々な障害が付きまとうのかも知れないが、このドキュメント作品の主役である、ロバート・マクナマラの生涯を映像で追った「回顧」は、大変価値のある歴史的証言であり、同時に、新たな「映像作品の可能性」を大いに引き出した作品である。決して技術的に新しいことは何もないが、高い企画力をもって新しい世界を開いたという意味では絶賛したい。
脚本も良い。「マクナマラからの10の教訓」という主題をしっかり持っていて、観客にそれを提示することにより、90分のドキュメントという、人によっては退屈を呼ぶ処をしっかり押さえてある。単なるドキュメントだけでなく、これを映画として扱おうとした趣旨もはっきりしている。これだけの内容の質と量は、もしテレビをメディアとして使ったら、欲張りなあの世界は、10回シリーズか何かでトータル的には散漫なもので終わってしまったであろう。映画をその発表媒体として使った発想が結果的に正解であった。
更に、単なる「歴史的証言」では無く、彼自身の21世紀への願いや祈りがこもっているところがいかにも映画作品らしい作りである。思えば、(それ以前にもあったが・・・)マイケル・ムーアの「ボウリング・フォー・コロンバイン」以来、それまでは映画というチャネルでは難しいとされていたドキュメンタリーという分野の作品がたくさん出てきているが、どれも、日本で公開されているものはアメリカでの興行成績が良いものばかりなので、今のところは、テレビとは違った論点を持ち、さらに凝縮されながらも、作品の中に起伏を持たせていて、どれも興味深いものに仕上がっている。ひとつ、残念だったのは、「10の教訓」を優先したために時代が前後してしまったことが、彼の生きた時代を長尺とした歴史事実を理解していない人間には、少し分かりづらかったのではないかと考えた。
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by turtoone
| 2005-02-26 18:50
| 映画(は行)