暫く療養と入院、更に手術をしまして映画ブログは更新を怠っておりました。作品は鑑賞してますので、徐々に復帰させていただきます。今後共、よろしくおねがいします。


by turtoone
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スラムドッグ$ミリオネア

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大変お恥ずかしいことながら、この作品を鑑賞するまで筆者は全くと言って良いほど、インドという国の現状と現実に関して無知であったということを冒頭に告白しなくてはいけない。筆者的に言うと、インドという国には一度だけ訪問したことがあるが、それはバブルより少し前のことで、4日間ほど滞在をしたが、三ツ星ホテルに、当たり前の観光・お土産コース、そして、21世紀には日本や中国を抜いてアメリカに次ぐ経済成長国家になるんだというポジティブな現地企業の大富豪の接待を受け、一方で、そもそも貧富の差に加え、カースト制度が残った階級社会の上に複雑に様々な宗教が係わり合い、世紀末から新世紀にはますます格差が広がるだろうという現実的な現地ガイドの両方の話が耳に入りつつも、ビジネス的には前者の話しか頭に残らず、また、新世紀になってからもこの国に関するニュースやドキュメントというのに中々触れる機会もなく、全く蔑ろにして来てしまった。それが証拠に本当にお恥ずかしながら、ムンバイという都市が旧ボンベイということも初めて知った。それだけでなく、この作品には随分色々なことを教わったが、それはインドの現状もしかりであり、同時に、映画作品の未来に関してもである。

「クイズミリオネラ」という番組がアメリカや日本以外にも、特に、このインドでも人気番組であるということは全く知らなかった。しかし、この作品が大変「得」をしているのは、この「クイズミリオネラ」という番組の構成やルールを知っていることにある。そして、日本ではアクも毒も全くない、必要以上に持ち上げるマスコミ以外にはその技量も風格も全く過去の人となってしまったと言っていいみのもんたなんていうお飾りではなく、このブレーム・クマールという番組司会者の個性と存在は凄く、彼の個性が番組と映画の両方のストーリーテーラーの役割なっているという脚本の出来は評価が高い。みのもんただったらこの両方を併せ持つことが出来なかったから、このキャラは日本公開でも相当なインパクトを与えられた。脚本的には単純に思えるのだか、逆に、クイズの進行ありきの脚本だから、見事に填まったと言っても良いし、つまりは脚色の勝利である。オスカーもその辺りは良く分かっていて脚色賞に選定しているが脚本にはノミネートすらしていない。しかし、一方でこのクイズありきの恩恵を大きく、所謂「物語の進行」に特段の説明が要らないという効果があるから、クイズ番組ではなく、もうひとつのストーリーである、主人公ジャマールの生い立ちとそれに伴うインドの時代背景に関しての説明と表現が大変容易にできた。鑑賞者はこのふたつを同軸で見ているから、最初の数問で出題内容と主人公を通したインドの現状が同軸であることに気づき、その両方に期待が係る。本物の「クイズミリオネラ」にも見られない、「次の問題内容への期待」というのが膨らんでいるところには、既にオリジナルの番組の存在すらも超えている(対日本版では・・・)。この辺りの脚色、更には演出の巧妙さは名作「クイズ・ショウ」をも上回る程の秀逸さである。

そして、筆者がこの作品をとても高く評価することのひとつに、「映画の枠」にきちんと収めたことにある。ムンバイ(ボンベイがムンバイになったことは知らなかったが、一方でムンバイのことは多少知っている。可笑しいかもしれないが、そんなにインドにのことに関して知らないという訳ではないのだ・・・)の抱える問題というのは多く、特に、世界で人口1000万人以上の都市の中ではライフライン(ミリオネラの、ではなく)の整備が著しく遅れているし、スラム居住率も高く、特に、教育と医療と飲料水(何れも作品に出てくるが・・・)の問題は現在でも顕著である。しかし、そこを必要以上に強調はしなく、また、そのすべてを主人公のジャマールに当て嵌めるのではなく、周囲の脇役を利用してその殆どを説明した。また、同時にこういう問題を描こうといると一方で極端に薄れてしまうのが、鑑賞者への訴求とエモーショナルラインの継続であるが、そこは、ラティカという初恋の女性と、唯一の身内である兄サリームを見事に使いこなした。インドの発展と共に変わっていく象徴として兄サリームを置き、一方で変わらない(というか変わってはいけないインド人の誇り)を繋ぎとめておくための効果としてラティカへの「初恋と変わらない永遠の思い」の両極端を配したことが、この作品をまさに万人向けの「映画作品」として完成させたことにある。

最後の最後まで感情が途切れない作品だった。にも、関わらず、残念だったのがエンドロール。なんだあれは。あれは良くインド料理屋に行くと流れている安っぽいインドミュージシャンのプロモと変わらない。ここで減点も考えたが、しかし、この作品、映画界にハリウッドが不要なことを証明してくれたとも言って良い内容である。だからちょっと甘いけど、今年初めて、昨年「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」以来の特A作品である。そしてまた、2001年「ビューティフル・マインド」以来7年ぶりに、漸く納得したオスカー作品賞でもあった。


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by turtoone | 2009-04-25 23:47 | 映画(さ行)